アスベストとは、耐熱性・耐久性・断熱性・保温性に優れた鉱物繊維ですが、粉塵を吸入すると重篤な健康被害を引き起こす可能性があることが明らかになり、2022年4月1日アスベスト法が改正されました。
しかし、アスベストは建築物や工作物などの建材として広く使用されているため、解体・改修工事を行う際にどのような対策を取ればいいのか不安に思われている人も多いのではないでしょうか?
そこで、この記事では改正内容と対策のポイントについて詳しく解説していきますので、最後まで読んで改正の内容を理解し、適切な対応をとり、あなたの健康と財産を守っていきましょう。
アスベストとは
アスベストとは、耐熱性・耐久性・断熱性・保温性に優れた鉱物繊維のことで、建築・土木・工業など幅広い分野で使用されてきたことから、日本国内には多くのアスベスト含有建材が存在します。
アスベストの健康被害
アスベストは、建築・土木・工業など幅広い分野で使用されてきましたが、アスベストの粉塵を吸入すると、肺がんや中皮腫などの重篤な健康被害を引き起こす可能性があるため、1987年以降、日本では全面的に使用が禁止されています。
アスベストの健康被害の主な種類は以下のとおりです。
⚫︎肺がん
肺がんは、アスベストの健康被害で最も多く発症する病気です。アスベストの粉塵を吸入すると、肺がん細胞の発生や増殖を促進すると考えられています。
⚫︎中皮腫
中皮腫は、肺や胸膜などの中皮にできる悪性の腫瘍です。アスベストの粉塵を吸入すると、中皮細胞の異常増殖を促進すると考えられています。
⚫︎悪性胸膜中皮腫
悪性胸膜中皮腫は、中皮腫の中で最も多く発症する病気です。
⚫︎悪性腹膜中皮腫
悪性腹膜中皮腫は、中皮腫の中で比較的まれに発症する病気です。
⚫︎悪性心内膜中皮腫
悪性心内膜中皮腫は、中皮腫の中で最もまれに発症する病気です。
⚫︎その他の健康被害
アスベストの粉塵を吸入すると、肺結核や肺気腫、肺線維症などの健康被害を引き起こす可能性もあります。
アスベストの健康被害を防止するためには、アスベストの使用が疑われる建築物や工作物の解体・改修工事を行う前に、アスベスト事前調査を実施し、アスベストの飛散防止対策を実施することが重要です。
アスベスト対策の強化
アスベストは、使用が禁止されてから30年以上経過していますが、日本国内には依然として多くのアスベスト含有建材が存在している可能性があります。
また、アスベストの健康被害は、吸入後20〜50年程度の潜伏期間を経て発症することがあるため、アスベスト対策の強化は喫緊の課題となっています。
[アスベスト対策の強化の内容]
⚫︎アスベスト事前調査結果の報告義務化
⚫︎有資格者によるアスベスト事前調査・分析の義務化
[アスベスト対策の強化のメリット]
⚫︎アスベストの飛散防止対策が適切に実施されるようになる
⚫︎アスベストの健康被害のリスクが低減される
⚫︎アスベストを使用した建物や工作物の解体・改修工事の安全性が向上する
[アスベスト対策の強化への取り組み]
国や自治体は、アスベスト対策の強化に関する情報の周知や普及啓発、補助金制度の拡充などを積極的に行う必要があります。
また、事業者はアスベスト対策の強化に必要な費用を負担するとともに、アスベスト含有建材の有無や種類、量などを調査するための事前調査を適切に実施する必要があります。
アスベスト法改正2022
アスベスト対策の強化の一環として、2022年からアスベストの使用が疑われる建築物や工作物の解体・改修工事を行う者は、事前調査の結果を労働基準監督署に報告することが義務付けられ、有資格者によるアスベスト事前調査・分析も義務化されました。
アスベスト事前調査結果の報告義務化
この改正により、アスベストの飛散防止対策が適切に実施されているかどうかを監督することが可能になりました。
[報告義務化の対象]
⚫︎解体工事、改修工事、塗装工事、吹付け工事など、アスベスト含有建材を除去したり、飛散させたりする可能性がある工事
⚫︎解体工事や改修工事の請負金額が100万円以上である工事
[報告内容]
⚫︎工事の名称・場所・工期
⚫︎アスベスト含有建材の有無や種類、量
⚫︎飛散防止対策の内容
[報告方法]
報告は、労働基準監督署のウェブサイトからダウンロードできる様式に必要事項を記入して、郵送または電子メールで行うことができます。
[報告の遅延や未報告の罰則]
報告の遅延や未報告には、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
報告義務化の対象となる工事を行う際には、事前調査を必ず実施し、その結果を労働基準監督署に報告するようにしましょう。
有資格者によるアスベスト事前調査・分析の義務化
アスベストの使用が疑われる建築物や工作物の解体・改修工事を行う者は、厚生労働大臣が定める講習を修了した者に加えて、国家資格である「建築物石綿含有建材調査者」の資格を有する者でなければ、アスベスト事前調査・分析を行うことができなくなりました。
[義務化の対象]
⚫︎解体工事、改修工事、塗装工事、吹付け工事など、アスベスト含有建材を除去したり、飛散させたりする可能性がある工事
⚫︎解体工事や改修工事の請負金額が100万円以上である工事
[資格の取得方法]
「建築物石綿含有建材調査者」の資格を取得するには、「建築物石綿含有建材調査者試験(国家試験)」に合格する必要があります。
試験は、毎年1回実施されます。
義務化の対象となる工事を行う際には、必ず有資格者による事前調査・分析を実施するようにしましょう。
改正後のアスベスト対策のポイント
法改正後は、アスベスト事前調査・分析と適切な飛散防止対策の実施が必要になります。
アスベスト事前調査・分析の依頼
アスベストの使用が疑われる建築物や工作物の解体・改修工事を行う際には、アスベストの飛散防止対策を適切に実施するために、事前調査・分析を実施する必要があります。
[事前調査・分析の依頼先]
事前調査・分析は、厚生労働大臣が定める講習を修了した者に加えて、国家資格である「建築物石綿含有建材調査者」の資格を有する者でなければ、実施することができません。
[事前調査・分析の費用]
事前調査・分析の費用は、調査対象の規模や建材の種類などによって異なりますが、一般的には10万円〜30万円程度かかると言われています。
[事前調査・分析の流れ]
1.依頼者の連絡先や工事の概要などの情報を取得する
2.現地調査を行い、アスベスト含有建材の有無や種類、量を調査する
3.調査結果を報告書にまとめ、依頼者に提出する
アスベストの使用が疑われる建築物や工作物の解体・改修工事を行う際には、必ず「建築物石綿含有建材調査者」の資格を有する者に事前調査・分析を依頼するようにしましょう。
適切な飛散防止対策の実施
アスベストの健康被害を防止するためには、アスベストの飛散防止対策が重要です。
適切な飛散防止対策は、以下の3つの基本的な考え方に基づいて実施する必要があります。
⚫︎湿式工法による解体・改修工事の実施
湿式工法とは、水を散布しながら解体・改修工事を行う方法です。水を散布することで、アスベストの粉塵を空中に飛散させないようにすることができます。
⚫︎アスベスト含有建材の密閉による運搬
アスベスト含有建材を密閉して運搬することで、アスベストの粉塵が飛散することを防ぐことができます。
⚫︎作業員の防護具の着用
作業員は、マスクやゴーグルなどの防護具を着用することで、アスベストの粉塵を吸入することを防ぐことができます。
適切な飛散防止対策を実施することで、アスベストの健康被害を防止し、作業場の周辺環境への影響を抑え、作業者の安全を確保することができます。
まとめ
アスベストは、耐熱性・耐久性・断熱性・保温性に優れた鉱物繊維ですが、粉塵を吸入すると重篤な健康被害を引き起こす可能性があるため、2022年4月1日、アスベスト法が改正されました。
改正により「アスベスト事前調査結果の報告」「有資格者によるアスベスト事前調査・分析」を義務化し、アスベストの飛散防止対策がより強力に行われることが期待されています。
日本国内には依然として多くのアスベスト含有建材が存在していますが、アスベスト対策の強化により、アスベストの健康被害を防止し、安全な社会を実現していきましょう。
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