アスベスト基礎知識

アスベスト使用はいつから禁止?禁止時期をわかりやすく解説!

アスベスト(石綿)は、吸入によって肺がんや中皮腫などの重篤な健康被害を引き起こす危険性がある物質として、長年にわたり社会問題となってきました。
こうしたリスクに対応する形で、日本では2006年にアスベストの製造・使用が全面的に禁止されています。

しかし、禁止措置が取られる以前に建てられた建築物の多くには、依然としてアスベスト含有の建材が使用されており、解体・改修工事などの際に飛散のリスクが生じる状況が続いています。

このような現状を踏まえ、2023年10月に関連法令が改正されました。改正内容には、すべての石綿含有建材を対象とした有資格者による事前調査の義務化に加え、調査結果の行政機関への報告、除去作業における管理体制の厳格化などが盛り込まれ、アスベスト対策は一層強化されています。

本記事では、アスベストの使用がいつ禁止されたのかという基本的な情報から、現在の法的枠組みや現場対応の具体的なポイントまでを網羅的に解説しています。
安心・安全な工事の実現と健康被害の予防のために、正確な知識をもとにした適切な対応が求められる今、ぜひ最後までご確認ください。

アスベスト規制がより厳しく!法改正のポイントと義務内容をチェック

法改正により、アスベストの取扱い方法が一層徹底されることになりました。

アスベスト調査・報告の義務化はいつから?

2023年10月1日より、アスベストに関する法規制が一層強化され、建築物の解体や改修に伴う調査制度が大きく見直されました。
この法改正では、事前調査の実施体制と調査者の資格要件に関して、より厳密な基準が導入されています。

とくに注目すべき点は、アスベストの事前調査を担当できるのは「石綿含有建材調査者」など、国が認定する資格を保有した者に限るというルールが明確に示されたことです。
これにより、無資格での調査実施は禁止され、現場での判断精度と報告内容の信頼性が一段と高まることが期待されています。

また、アスベスト飛散による健康リスクを回避するため、除去作業中の管理方法や作業手順についても、遵守すべき基準が徹底されるようになりました。
単に事前調査を行うだけでなく、工事期間中の安全対策や周辺環境への影響を最小限に抑える管理体制が、法的義務として重要視されています。

このような背景から、建物の所有者や発注者も、改正された法令の内容をしっかりと理解し、適切な技術者や業者を選定する姿勢が求められます。
万が一、調査や作業が不適切だった場合、行政指導や罰則の対象となる可能性もあり、注意が必要です。

今後アスベストに関連する調査・除去作業に関わる予定がある場合は、法改正による変更点と対応方法を正確に把握しておくことが不可欠です。
安全な施工を実現するためにも、最新の法令を踏まえた確実な対応と、法令遵守の意識を高めることが強く求められています。

どんな工事が義務化の対象になる?

2023年10月に施行された法改正により、アスベストをめぐる法的な規制が一段と厳格化されました。
特定の建築工事については、アスベスト含有の有無を事前に調査し、その結果を行政機関に報告することが義務化されています。

この法改正は、アスベストの飛散による健康被害を防止することを目的としており、工事の規模や内容にかかわらず、一般住宅のリフォームや小規模な解体工事も対象となるケースがあるため注意が必要です。

以下のいずれかに該当する工事では、有資格者による事前調査と、自治体への報告が法律で義務付けられています

建築物の解体工事
床面積の合計が80㎡以上の建物を解体する工事
が対象となります。
この面積基準は、一戸建て住宅や小規模な商業施設でも該当する場合があるため、事前の確認が欠かせません。

建築物の改修・補修工事
請負契約額が込100万円を超える改修・補修工事
が対象です。
壁や天井の改装、設備交換など、一般的なリフォーム工事もこの条件に該当する可能性があります。

工作物の解体・改修工事
煙突・配管・ボイラー・ダクトなどの工作物に関する解体または修繕工事も、請負金額が100万円以上の場合は対象となります。
特に工場や事業所などで実施される設備更新工事などが該当するケースが多く見られます。

これらの工事に該当する場合、「石綿含有建材調査者」など所定の資格を持つ専門調査員によって事前調査を実施し、結果を都道府県または政令指定都市へ提出することが義務化されています。

もし調査や報告を怠った場合は、行政指導の対象となるほか、罰則が科される可能性もあるため、法令を厳守することが強く求められます。

建築・解体・改修工事を検討している場合は、最新の法規制を確認し、法令に準拠した適切な対応を行うことが重要です。

事前調査から報告までの具体的な流れ

アスベスト(石綿)を含む建材は、建築物の解体や改修工事の際に空気中に拡散するおそれがあり、作業者や周辺住民の健康に重大な影響を及ぼすリスクがあります。こうした事態を未然に防ぐため、建物の工事を行う前に、アスベストの有無を確認する「事前調査」が法的に義務化されています。

この制度は、2022年に石綿障害予防規則が改正されたことにより明確化され、さらに2023年10月の大気汚染防止法改正で対象範囲と実施基準が強化されました。

《調査は「書面調査」と「目視調査」の2段階で実施》
アスベストの有無を判断するための調査は、まず図面や書類を確認する書面調査から始まります。さらに、現場の状況に応じて目視による現地確認が行われる流れが一般的です。

書面調査
建築確認書、設計図、施工時の記録などをもとに、建材にアスベストが含まれている可能性を確認する作業です。
特に1980年代以前に建てられた建物では、アスベストを含む材料が使用されていた事例が多く、資料の確認が重要な判断材料となります。

目視調査
書類では判断がつかない場合、または現地の確認が必要な場合には、天井や壁、断熱材、吹付け材などを実際に目視で調査します。
目視だけでは分かりにくいことが多いため必要に応じて、表面の状態を触診したり、簡易検査を行ったりすることで、アスベストの可能性をさらに評価します。

《含有が疑われる場合は「分析調査」へ》
目視・書面の結果に基づき、アスベストが含まれている可能性が高い、あるいは確認された建材については、分析調査が必要となります。
この調査では、現場から採取したサンプルをJIS規格に準じた方法で専門機関が成分分析し、アスベストの有無や含有量を科学的に判定します。

《含有が確認された場合の対応義務》
アスベストが含まれていることが判明した場合、厚生労働省や環境省が定める作業基準に従って、飛散を防止しながら適切に除去する工事を行う必要があります。
作業は認定された専門業者によって実施され、作業手順の遵守が義務化されています。違反した場合には、行政指導や法的措置が取られる可能性があります。

《調査結果は発注者への報告と現場掲示が必要》
調査が完了したあとは、工事の依頼主である建物所有者などに対して、調査内容を記した報告書を提出する義務があります。
また、調査結果は工事現場に掲示しておくことも法令で定められており現場作業員や近隣住民が内容を確認できる状態にする必要があります。

《適正な対応と法令遵守が求められる》
アスベスト調査は、単なる形式的な確認ではなく、人の命と健康を守るための極めて重要な措置です。
調査を怠る、または不適切な方法で実施した場合には、施工者に重い責任が課される可能性があるため、確実な対応が求められます。

建築関連の事業者だけでなく所有者や管理者も制度の概要を理解し、有資格者に依頼して調査を実施できる体制を整えることが大切です。
適切な知識と準備が、工事の安全性と信頼性を確保する第一歩となります。

まとめ

アスベスト(石綿)は、吸入することで重篤な健康被害を引き起こす危険性がある有害物質として広く知られており、2006年に日本ではその使用が全面的に禁止されました。
しかし、使用禁止以前に建築された建物には、現在も石綿を含有する建材が多く残っているのが実情です。これにより、解体や改修工事における安全管理は、いまなお重要な課題となっています。

このような背景から、2023年10月に大気汚染防止法が改正され、アスベストを含む建材に関する事前調査と自治体への報告が義務化されました。また、調査や作業において違反が認められた場合の罰則も強化されています。

この改正は、工事現場でのアスベスト飛散を防ぎ、作業者および地域住民の健康を守ることを目的としたものです。
建設業者や工事の発注者にとっても、法令に準じた適切な対応を行うことが、社会的な責任として強く求められています。

今後、アスベスト関連の工事に携わる場合は、最新の規制内容を正確に把握し、適切な体制のもとで確実な対策を講じることが不可欠です。
それが、安全性と信頼性の両立を実現する第一歩となるでしょう。

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