住まいのリフォームや解体が増えている今、見逃せないのが「アスベスト建材のリスク」です。
かつて「夢の素材」と呼ばれたアスベストは、その高い耐熱性や防音性から多くの建材に使用されてきました。しかし、その裏にあった健康への深刻な影響が明らかになり、今では使用が禁止されています。
とはいえ、過去に建てられた住宅や建築物には、今もなおアスベストを含む建材が数多く残されています。
そして、それに気づかないままリフォームやDIYを行った結果、「解体中に粉じんを吸い込んでしまった」「壁材に触れてしまった」などのトラブルが実際に報告されているのです。
本記事では、アスベストが含まれる可能性のある建材の種類と特徴、使われていた年代、そして見つかった場合の正しい対応方法まで、やさしく丁寧に解説していきます。
まずは、「どんな建材にアスベストが使われていたのか」を知るところから、一緒に確認していきましょう。
アスベストとは何か?

ここでは、アスベストの歴史的背景と健康被害による影響について詳しく解説します。
アスベストの性質と利点
アスベストは、自然に産出される繊維状の鉱物で、細かく裂ける特徴を持っています。一見すると綿のような見た目ですが、その正体は非常に細くて軽い「鉱物の繊維」。
この細さが、さまざまな建材に混ぜやすく、加工しやすいというメリットを生み出しました。
特に注目されたのが、次のような性質です。
・耐熱性が高い:高温でも変形や燃焼しにくく、火災対策に有効
・耐久性に優れている:腐食や劣化に強く、長く使える建材として重宝された
・断熱・防音効果がある:音や熱を通しにくいため、住環境の快適性アップに貢献
・安価で手に入りやすい:コストを抑えながら性能を高めることができた
こうした性質から、1970年代〜1990年代前半にかけて多くの住宅やビル、公共施設で使われてきました。とくに天井材・外壁材・屋根材・床材など、建物のあらゆる部分で使用されていたのです。
しかし今では、その繊維が空気中に舞い、肺に入ることで深刻な病気を引き起こす可能性があることが明らかになり、現在は製造・使用ともに全面的に禁止されています。
アスベスト吸引による健康被害
アスベストは、目には見えないほど細かな繊維状の物質です。
そのため、空気中に舞い上がると気づかないうちに吸い込んでしまうことがあり、それが私たちの体に深刻な影響を及ぼすことがあります。
特に問題になるのは、アスベストを吸引したあと、すぐに症状が出ないという点です。
多くの場合、10年〜40年もの長い潜伏期間を経てから健康被害が現れるため、「昔ちょっと作業しただけだから大丈夫」と思っていても、後になって病気が発症するケースもあります。
主な健康被害には、次のようなものがあります
中皮腫(ちゅうひしゅ)
肺や腹部を包む膜に発生する悪性のがんで、アスベスト特有の疾患とされています。
非常に進行が早く、治療が難しいとされています。発症者の多くが、建設現場や造船所などでアスベストに長期間さらされた経験を持っています。
肺がん(アスベストによるもの)
長期間アスベストを吸い込むことで、肺に炎症が蓄積され、がんを発症するリスクが高まります。特に喫煙者との相乗効果でリスクが倍増すると言われています。
石綿肺(アスベスト肺)
アスベストの繊維が肺の中に入り込み、長い時間をかけて肺組織が硬くなってしまう病気です。呼吸が苦しくなり、進行すると日常生活に支障をきたすこともあります。
これらの病気は、いずれも少量の吸引でも発症する可能性があるため、
「たった一度の作業」「ほんの短時間だけ」というケースでも油断は禁物です。
日本での使用・禁止の流れ
アスベストは、かつて日本の建築業界でも「万能素材」として重宝されていました。軽くて丈夫、耐火性・断熱性にも優れていたことから、住宅・ビル・学校・工場など、さまざまな建物に幅広く使われていたのです。
特に1950年代〜1970年代前半にかけては、断熱材や屋根材、内装材などでアスベストを含む建材が一般的に使われていました。
しかし、健康への深刻な影響が明らかになるにつれて、少しずつ使用が見直され、規制が進んでいきます。
🔸 アスベスト規制の主な流れ
年代 | 規制内容 |
---|---|
1975年 | 吹き付けアスベストの使用が原則禁止に(労働安全衛生法) |
1989年 | 含有率5%以上の石綿製品の製造・輸入・使用を一部制限 |
1995年 | 含有率1%以上の吹き付け材の全面禁止へ |
2004年 | 含有率1%超の全製品について製造・使用を原則禁止に |
2006年 | 含有率0.1%を超えるアスベスト製品の原則禁止が確定 |
2012年 | 含有率0.1%以下の製品も含めて、事実上の全面禁止に |
つまり、アスベストを完全に使わなくなったのは比較的最近のこと。
2006年までに建てられた建物には、アスベスト含有建材が残っている可能性が高いといわれています。
アスベスト含有建材の一覧と特徴

アスベストは、その特性からさまざまな建材に混ぜて使われていました。
住宅やビル、学校、工場など、幅広い建築物に利用されており、建材によって「見た目」や「リスクの高さ」が異なることがポイントです。
以下に、アスベストを含む可能性がある建材の種類と、それぞれの特徴を一覧でご紹介します。
アスベスト含有建材の代表例と特徴
建材名 | 主な用途 | 特徴 | リスクの高さ |
---|---|---|---|
吹付けアスベスト | 天井裏・鉄骨・ダクト外部などの断熱や防音 | 綿状に見える素材を直接建物表面に吹き付ける。粉じんが非常に舞いやすく、最も飛散性が高い。 | ★★★★★(非常に高い) |
スレート(石綿スレート波板) | 屋根・外壁材 | グレー色で薄くて軽い。ひび割れたり割ったりすると粉じんが出やすい。 | ★★★★☆ |
ケイ酸カルシウム板(ケイカル板) | 軒天・壁・天井下地 | ボード状で白っぽく、施工しやすい。アスベスト含有の初期製品には注意が必要。 | ★★★☆☆ |
ビニル床タイル(Pタイル) | 床材(住宅・事務所) | 表面はつるつるしているが、裏面や接着剤にアスベストを含む場合がある。 | ★★★☆☆ |
石綿含有パテ・目地材 | 壁・天井のつなぎ目、下地処理材 | 乾燥すると脆くなりやすく、削ると粉じんが出る。外見では判別が難しい。 | ★★★★☆ |
石綿含有接着剤 | 床材やタイルの貼り付けに使用 | 床の下や壁の内側など見えない部分に隠れており、気づきにくい。 | ★★★★☆ |
ロックウール吹付け材 | 天井・壁の断熱や防音 | 見た目がアスベストに似ているが、非含有製品も多いため検査が必要。 | ★★★★☆ |
外壁仕上げ材(石綿含有塗材) | モルタル・壁面などの仕上げに使用 | 見た目では判別しにくく、塗膜が劣化している場合は飛散の可能性も。 | ★★★☆☆ |
覚えておきたいポイント
・目視だけで判断するのは危険です。 特に内装や床下にある建材は、見ただけではアスベストの有無がわかりません。
・2006年以前の建物では、これらの建材が使われている可能性が高いとされています。
・DIYやリフォームの際は、不用意に壊したり削ったりしないことが大切です。
建材から見る「アスベストリスクが高い場所」
アスベストを含む建材は、かつて建物のあらゆる場所に使われていました。
一見安全そうに見える住宅でも、知らないうちにアスベストが身近に潜んでいることがあります。
ここでは、住まいの中で特にアスベストのリスクが高いとされる場所を、建材の種類とあわせてご紹介します。
屋根まわり|スレートや波板が要注意
古い住宅の屋根には、スレート(石綿スレート)や波板状の屋根材が多く使われていました。これらの建材は軽量で耐火性がある反面、割れやすく粉じんが飛びやすいため、老朽化していると危険です。
外壁・軒天井|ケイカル板や外装パネルに注意
外壁の下地や軒天には、ケイ酸カルシウム板(ケイカル板)や窯業系サイディングなどが使われており、1970年代〜1980年代の製品にはアスベストが含まれている可能性があります。とくに白っぽいボード状の素材や、施工時期が古い場合は要確認です。
内装・天井|吹付け材やパテ類がリスクに
古いビルや公共施設では、天井裏や鉄骨部分に吹き付けアスベストが使われていた例が多くあります。また、住宅でも天井のつなぎ目や下地処理に使われた石綿パテや接着剤が残っていることも。表面が見えていない部分にも隠れている場合があるため、見た目がキレイでも油断できません。
床まわり|Pタイルや床用接着剤に注意
床に使われたビニル床タイル(Pタイル)や接着剤類も、アスベスト含有の対象です。
タイルをはがした裏側や、下地の接着剤部分にアスベストが含まれている場合があるため、床の張り替え時には特に注意が必要です。
そのほか|配管まわり・煙突・間仕切り板など
工場や古い住宅では、配管の保温材、煙突、間仕切り板などにもアスベストが使用されていたケースがあります。特に断熱材や防火材として使われていたものは外見からは判断しづらいため、築年数が古い建物では、専門業者による確認をおすすめします。
自宅にアスベスト建材があるかを調べる方法

ここでは、アスベスト含有建材の有無を明確にするための年代的目安や確認の方法について詳しく解説します。
建築年代での判断ポイント
アスベストが使われていたかどうかを見分けるうえで、大きなヒントになるのが「建物が建てられた年代」です。建築当時の法律や建材の流通状況によって、アスベスト含有の可能性が高い時期と、そうでない時期が分かれています。
ここでは、年代別に注意すべきポイントをやさしく解説します。
1970年代以前の建物|最もリスクが高い時期
この時代は、アスベストの使用量がピークに達していた時期です。
特に吹き付けアスベストやスレート屋根、ケイカル板などが広く使われていたため、住宅・ビル問わず多くの建物に含有建材が存在している可能性があります。
この年代の建物は、ほぼすべての部位でアスベストを疑うべきといえます。
1980年代〜1990年代前半|建材により含有の可能性あり
アスベストの健康被害が徐々に問題視され始めたものの、まだ多くの建材に使用されていました。
特にこの時期は、「ノンアスベスト」と表示されていない限り、アスベストが含まれている可能性がある建材が多く流通しています。
1995年〜2004年|使用量は減少するも一部では使用
この時期には、法律で含有率1%超のアスベストの使用が禁止されました。
しかし、0.1〜1%未満の低濃度アスベストを含む製品は、依然として流通していたため、完全に「ゼロ」とは言い切れません。
2006年以降の建物|基本的にはアスベスト不使用
この年を境に、0.1%を超えるすべてのアスベスト含有製品の製造・使用が禁止されました。
そのため、2006年以降に建てられた新築住宅であれば、原則としてアスベストのリスクは低いとされています。
ただし、リフォームで古い建材がそのまま残っている可能性や、中古資材の転用がないかなど、念のための確認は大切です。
建築確認日 ≠ 実際の施工日に注意!
注意したいのは、「建築確認日(設計・申請時期)」と「実際の施工日・竣工日」はずれることがあるという点。
たとえば、2006年の設計であっても、使われた建材がそれ以前に製造されたものなら、アスベストを含んでいる可能性があるのです。
建築確認済証や設計図書、施工記録などを照らし合わせて、建材の内容まで確認するのが理想的です。
自治体への相談・資料確認
「この家、アスベストが使われているかもしれないけど、どうやって確かめればいいの?」
そんな不安を感じたとき、最初の相談先として頼りになるのが、お住まいの自治体(市区町村)です。
各自治体には、建築・環境・保健所のいずれかにアスベスト関連の相談窓口が設けられていることが多く、
個人住宅の持ち主であっても、無料でアドバイスを受けられるケースがあります。
相談前に準備しておきたいもの
相談する際には、以下のような情報があるとスムーズです:
・建物の建築年(おおよそでもOK)
・建築確認済証(確認通知書)や設計図面
・過去のリフォーム履歴や工事記録があれば尚可
とくに「建築確認済証」は、建てられた年代や建築主、施工会社などの情報が記載されており、アスベスト使用の可能性がある時期かどうかを判断する大きな手がかりになります。紛失してしまっている場合でも、市区町村の建築課で閲覧や再発行の手続きを行えることがあります。
自治体によってはこんな支援も
・アスベストに関する無料相談窓口の設置
・住宅調査や分析の費用補助制度(上限あり)
・工事前に必要な届け出書類のサポート
・業者を選ぶ際の相談アドバイス
制度は地域ごとに異なるため、まずは役所の建築課・環境課・保健所などに電話または公式サイトで確認してみましょう。
専門機関の分析・検査の流れ
「家の建材にアスベストが使われているかもしれない」
そう感じたとき、もっとも確実に判断できるのが、専門機関による分析・検査です。
アスベストは、目で見ただけでは含まれているかどうかの判断ができません。とくに壁や天井の内側、床下の接着剤などに使われている場合、外から見える部分だけでは判断できないことがほとんどです。
ここでは、専門機関に依頼した場合の検査の流れをご紹介します。
① 調査の準備と依頼先の選定
まずは、「石綿含有建材調査者」などの資格を持つ業者や分析機関を探します。
お住まいの地域によっては、自治体が認定業者を紹介してくれることもあります。
依頼前に確認しておきたい情報
・建物の建築年・構造・気になる建材の場所
・過去のリフォームの有無
・建築確認通知書や図面があれば、より正確な判断に役立ちます
② 現地調査・サンプリング(検体の採取)
調査員が現地を訪れ、アスベストが含まれていそうな箇所から少量の建材サンプルを採取します。
この作業は、飛散防止措置をとりながら慎重に行われるため、住んでいる人への影響は最小限に抑えられます。
ポイント
・自己判断で壊すのは危険。必ず専門家にまかせる
・必要な部分だけを丁寧に切り取り、安全に封入して分析機関へ送付
③ 専門分析(偏光顕微鏡・X線回折など)
採取した検体は、厚生労働省の基準に基づいた方法で分析されます。
主な分析手法
・偏光顕微鏡法(PLM):光を使って繊維の種類を識別
・X線回折法(XRD):微細な成分まで測定し、アスベストの種類を特定
・位相差分散顕微鏡法(PCM):主に空気中の繊維濃度測定に使われる
分析には数日〜1週間ほどかかるのが一般的です。
④ 結果報告と対応アドバイス
検査が終わると、「アスベスト含有の有無」や「その種類・濃度」などが記された報告書が届きます。調査機関によっては、除去や封じ込めに関するアドバイスや見積もり対応もしてくれる場合があります。
検査にかかる費用の目安
費用は、検体数や場所によって異なりますが、以下が一般的な相場です。
・1検体あたり:15,000円〜30,000円程度(税込)
・出張費・報告書作成費用が別途かかる場合あり
自治体によっては、分析費用の補助制度が用意されていることもあるので、事前に確認してみましょう。
アスベストが見つかった場合の対応方法

ここでは、アスベストが見つかった場合の具体的な対応方法について詳しく解説します。
封じ込め/囲い込み/除去の違い
建物にアスベストが含まれていることがわかったとき、すぐに「全部取り除かなければ!」と思ってしまいがちですが、実はいくつかの対応方法があります。
それが、「封じ込め」「囲い込み」「除去」の3つ。
それぞれに特徴や適した状況、コストや作業の手間が異なるため、状況に応じた選択が大切です。
封じ込め(シール処理)
アスベストをその場に残したまま、専用の薬剤や樹脂で表面を固めて飛散を防ぐ方法です。
建材の表面をコーティングするように処理し、アスベスト繊維が空気中に舞うのを防ぎます。
・比較的短期間・低コストで対応可能
・建材が傷んでおらず、普段触れる場所でなければ有効
・建材そのものの劣化が進むと、再リスクの可能性あり
使われるケース:天井裏や壁内部など、頻繁に触れない場所
囲い込み(カバー処理)
アスベストが含まれた建材の周囲を、石膏ボードや鋼板などで物理的に覆う方法です。
完全に「封じる」ことで、繊維が飛散しない状態を保ちます。
・封じ込めよりも耐久性があり、安全性も高め
・建材を壊さないため、粉じんを出さずに作業できる
・カバーの施工にスペースが必要/意匠性が損なわれることも
使われるケース:学校・病院・事務所などの天井裏・配管まわり
除去(完全撤去)
アスベストを含む建材をすべて取り除く方法です。
リフォームや解体のタイミングで選ばれることが多く、最も確実なリスク解消法と言えます。
・将来的な不安を取り除ける
・売却や用途変更時にも安心材料になる
・費用が高額になりがち/専門業者と届出が必須/工期も長め
使われるケース:全面改修や解体をともなうリフォーム時
3つの対応方法を比較すると…
対応方法 | 安全性 | 費用 | 作業の大がかりさ | 長期的リスク |
---|---|---|---|---|
封じ込め | △ 中程度 | ◎ 低中程度 | △ 小規模 | △ 劣化時に注意 |
囲い込み | ○ 安定 | ○ 中高程度 | ○ 中程度 | ○ 比較的安心 |
除去 | ◎ 高い | △ 高程度 | × 大規模 | ◎ 完全解決 |
除去作業には専門資格が必要
アスベストが見つかったからといって、「とりあえず自分で壊してしまおう」「業者に頼めば誰でも大丈夫」。そう考えるのはとても危険です。
アスベストは扱い方を間違えると、作業する人だけでなく周囲にも健康被害を及ぼす恐れがあるので、アスベストの除去作業には、法律で定められた専門資格と届け出が必要とされています。
アスベスト作業に必要な主な資格
除去の内容や規模によって異なりますが、以下のような国家資格や講習修了者でなければ作業はできません。
資格名 | 対象作業 | 概要 |
---|---|---|
石綿作業主任者 | アスベスト除去現場の責任者 | 作業管理・安全確保・飛散防止策の指導などを担う |
特別教育修了者 | 一般の作業従事者 | アスベストを扱う全員が受けるべき基本教育 |
石綿含有建材調査者 | 調査・分析業務 | 施工前にアスベストの有無を確認・記録する専門職 |
建築物石綿含有建材調査者(令和5年以降) | 新たな制度による調査資格 | 調査結果の報告義務がある場合はこの資格が必要になるケースあり |
特に2023年10月からは、一定規模の解体・改修工事を行う際には「調査結果の報告義務」が生じ、
指定の資格を持つ調査者でなければ対応できないケースも増えています。
届出・報告も義務化されています
アスベストを含む建材の除去や改修を行う場合は、労働基準監督署や自治体に事前の届出が義務づけられています。
・作業の14日前までに「石綿作業届」の提出
・作業後の報告義務
・現場に「石綿作業主任者」を配置する義務 など
これらを怠ると、法令違反として指導・罰則の対象になることもあります。
安心できる業者を選ぶために
アスベストの除去は、資格と経験のある専門業者に依頼することが絶対条件です。
信頼できる業者かどうか見極めるポイントはこちら
・必要な資格を提示してくれる
・調査・届出・作業工程について丁寧に説明がある
・作業後の飛散防止処理まで一貫して対応してくれる
・実績や口コミが確認できる
また、自治体の公式サイトや環境局、保健所などで紹介されている業者リストを活用するのもひとつの方法です。
工事を依頼する際の注意点と届け出義務
アスベストを含む可能性のある建材が見つかったとき、
リフォームや解体工事を進めるには慎重な対応が必要です。
アスベストの扱い方については、法律で特定の手順や届け出を義務づけています。
工事を依頼する前に確認しておくべきポイント
以下の点を押さえておくと、トラブルや違法施工のリスクをぐっと減らすことができます。
① 建材にアスベストが含まれているかを事前に確認
・解体・改修予定の部位が、2006年以前に施工された建材でないかチェック
・専門業者に調査依頼し、アスベストの含有有無を明確にする
・自治体や保健所に相談して、判断に迷ったらプロのアドバイスを受ける
② 工事業者の資格・対応範囲を確認
・アスベスト除去には「石綿作業主任者」「石綿含有建材調査者」などの資格保有者が必要
・工事を請け負う業者が、必要な届出や安全対策をきちんと行う体制か確認する
・「除去だけで終わり」ではなく、その後の飛散防止処理や報告義務にも対応しているかを見る
届け出が必要なケースとは?
アスベスト関連工事を行う場合、以下のような法令に基づいた届け出義務があります。
届出内容 | 提出先 | 対象工事 | 提出期限 |
---|---|---|---|
石綿作業届 | 労働基準監督署 | アスベスト除去・解体作業など | 作業開始の14日前まで |
解体等の事前調査報告 | 自治体(環境部など) | 80㎡以上の解体・改修工事 | 同上 |
石綿含有建材調査結果の記録 | 建築主・施工業者で保管 | すべての解体・改修工事 | 作業終了から3年間保存 |
※2023年10月から一部制度が強化され、報告義務対象が拡大しています。
届け出を怠るとどうなる?
・行政指導や是正命令の対象に
・発注者(建物の持ち主)にも説明責任が求められる場合あり
・周辺住民からの苦情や損害請求につながることも
アスベスト対策は、「知らなかった」「業者に任せていた」では済まされない責任がともないます。
安全な工事のために「二重チェック」が安心
①調査 → 結果の確認
②届出 → 業者まかせにせず書類の控えをもらう
③施工中 → 飛散防止対策や周囲への配慮がされているか確認
また、作業前に近隣への説明や掲示物が出ているかも大切なチェックポイントです。
除去にかかる費用と補助金制度

ここでは、アスベスト除去に伴う費用の目安と補助金制度について詳しく解説します。
住宅規模・除去方法別の目安
アスベスト除去を検討する際に気になるのが、実際にどれくらい費用がかかるのかという点ではないでしょうか。
費用は建物の規模や、どの除去方法を選ぶかによって大きく異なります。
ここでは、住宅規模別・除去方法別の参考価格を、わかりやすくご紹介します。
除去にかかる費用の基本構造
アスベスト除去費用は、以下の要素で決まります:
・含有している建材の種類と面積(㎡単位)
・施工場所(屋根・壁・天井など)
・除去 or 封じ込め or 囲い込みの対応方法
・必要な飛散防止対策や養生の範囲
・作業員の資格・届け出費用を含めた管理コスト
規模・方法別の目安料金(一般的な例)
建物規模・作業内容 | 除去対象例 | おおよその費用相場(税込) |
---|---|---|
一戸建て(天井部分10㎡) | 吹付け材(飛散性高) | 25万〜50万円程度 |
一戸建て(床材20㎡) | Pタイル・接着剤 | 15万〜30万円程度 |
戸建て1階全面(50㎡) | 壁材+床材の除去 | 50万〜80万円程度 |
戸建て全面除去(80〜100㎡) | 複数部位のアスベスト除去 | 100万〜200万円超もあり |
封じ込め処理(1か所) | 軒天ケイカル板など | 20万〜50万円程度 |
囲い込み処理(天井30㎡) | 鉄骨まわりなど | 50万〜80万円程度 |
※価格はあくまで目安であり、建材の状態や立地、作業環境によって変動します。
注意しておきたい追加費用のポイント
・足場の設置や廃材処分費が別途かかる場合あり
・調査費・分析費(1検体1.5万〜3万円程度)は除去費用と別になることも
・作業中に発覚した隠れたアスベストが追加費用につながるケースも
補助金制度が使えるケースもあります
お住まいの地域によっては、アスベストの調査・除去に対して補助金が出る制度が用意されていることがあります。
たとえば
・補助率:費用の1/2〜2/3
・上限額:30万円〜100万円程度
・条件:個人住宅であること、指定業者を使うことなど
国や自治体の補助金・助成制度の確認方法
アスベストを含む建材の除去や調査には、ある程度の費用がかかるため、
「少しでも負担を軽くしたい…」と思われる方も多いのではないでしょうか。
自治体によってはアスベストの調査費用や除去工事に対する補助金や助成制度を設けている場合があります。
制度の内容や金額、対象条件は地域によって異なりますが、うまく活用すれば数万円〜数十万円の支援を受けられる可能性もあるのです。
どうやって調べる?補助制度の確認方法
以下のステップで、お住まいの地域で使える補助制度があるかどうかを簡単に確認できます。
① 自治体の公式サイトで検索する
市役所・区役所・町役場の「環境課」「建築課」「住環境整備課」などのページを開き、
次のようなキーワードで検索してみましょう。
アスベスト 補助金/石綿 除去 助成/住宅 解体 補助/住環境整備 補助 など
多くの自治体では、【補助対象者・対象工事・申請手続き・必要書類】などが一覧で掲載されています。
② 「○○市 アスベスト 補助金」などで直接検索してみる
GoogleやYahoo!などで、
「〇〇市 アスベスト 補助金」
「〇〇区 石綿 除去 助成制度」
など、自治体名+アスベスト関連ワードで検索してみましょう。
補助制度の特設ページや、パンフレットPDF、申請用紙のダウンロードページにアクセスできることが多いです。
③ 電話や窓口で直接問い合わせる
「サイトを見たけれど、情報が見つからない…」というときは、
役所の建築・環境部門に直接電話して確認するのが確実です。
補助制度が使える条件の一例
条件項目 | 内容例 |
---|---|
建物の種別 | 個人住宅・空き家・木造住宅など |
工事内容 | アスベスト含有建材の調査・除去 |
工事業者 | 自治体が指定する業者に限ることも |
補助額 | 上限30万〜100万円、または工事費の1/2など |
提出書類 | 工事見積書、現況写真、施工後の報告書など |
※内容は自治体ごとに異なります。必ずご確認ください。
まとめ
アスベストは、かつて建材として重宝されていた一方で、吸引による健康被害が深刻な問題となり、現在では使用が禁止されていますが、2006年以前の建物には、屋根・天井・壁・床など、目に見えない部分にアスベストを含む建材が使われている可能性があります。
工事前の事前調査や分析は、資格を持つ専門業者による対応が必須です。アスベスト含有が確認された場合は、状況に応じて封じ込め・囲い込み・除去といった処理を行い、必要に応じて行政への届け出も行います。
費用面が心配な方は、自治体の補助制度や助成金の有無を確認し、調査費や除去費を少しでも抑える方法も取り入れましょう。
アスベストは、正しく知れば必要以上に恐れるものではありません。今ある住まいで安心して暮らすためにも、まずは現状を把握することから始めてみてください。