RC造(鉄筋コンクリート造)の建物に住んでいる方や所有している方の中には、「アスベスト」という言葉に不安を感じている方もいるかもしれません。特に古い建物では、過去にアスベストが使用されていた可能性があり、そのまま放置すると健康や環境へのリスクが懸念されます。
この記事では、RC造建物でアスベストがどのように使われているのか、具体的な使用部位や危険性を解説し、安全に対応するための方法を詳しくお伝えします。
正しい情報を得て、住まいや建物を安全に保つための行動を始めてみませんか?安心して暮らせる環境を守るため、ぜひ最後までご覧ください。
RC造建築でアスベストが使用された部位
ここでは、RC造建築でアスベストが使用された部位や現場の例と施工方法との関連性について詳しく解説します。
アスベストが使用された部位と現場例
1. 天井材(吹き付けアスベスト)
・現場例: 体育館、工場、オフィスビルなどの天井部分
・使用目的: 防音性や耐火性の向上、断熱材として吹き付けられた
・特徴: 天井裏や梁に直接吹き付けられ、経年劣化によって粉じんが飛散しやすい
2. 柱や梁の耐火被覆材
・現場例: 高層ビルや商業施設の柱や梁部分
・使用目的: 鉄筋コンクリートの耐火性を高めるための被覆材
・特徴: 見た目には確認しづらく、解体時に粉じんが飛散するリスクが高い
3. 配管やダクトの断熱材
・現場例: ビルの空調設備や工場の蒸気配管など
・使用目的: 配管内の温度を維持し、結露や熱損失を防ぐための断熱材
・特徴: 外装に使用されるため、劣化すると周囲にアスベストが拡散しやすい
4. 外壁や内壁のパネル(スレート材)
・現場例: 学校や公共施設、倉庫の外壁・内壁部分
・使用目的: 軽量で耐久性に優れた建材として使用
・特徴: 見た目は普通のパネル材だが、加工時や破損時に粉じんが発生
5. 床材(ビニール床タイル)
・現場例: 商業施設やオフィスの床仕上げ材
・使用目的: 耐久性や防音性の向上のためにアスベストを混ぜ込んだ製品が使用された
・特徴: タイル自体は固いが、剥がし作業でアスベストが露出する可能性がある
6. 屋根材(スレート瓦、波形スレート)
・現場例: 工場や倉庫の屋根材
・使用目的: 軽量で耐候性が高いため、広範囲で使用された
・特徴: 屋根材の割れや施工時の切断作業で粉じんが発生する
7. ボイラー周辺の断熱・耐火材
・現場例: 工場や病院のボイラー室
・使用目的: 高温にさらされる設備を保護するための断熱材
・特徴: ボイラー周辺や設備解体時に問題となりやす・
8. 防火壁や間仕切り材
・現場例: 工場や倉庫、地下駐車場の間仕切り壁
・使用目的: 火災時の延焼を防ぐために使用された
・特徴: 表面は塗装されている場合も多く、見た目では判断しにくい
これらの部位は、RC造建物の解体やリフォーム時に特に注意が必要な箇所です。適切な調査を行い、必要に応じて専門業者に相談することが推奨されます。
RC造特有の施工法とアスベストの関係
RC造(鉄筋コンクリート造)は、鉄筋とコンクリートを組み合わせることで強度と耐久性を高めた建築工法で、特に中高層建物や工場、公共施設などで多く採用されています。しかし、過去の施工においてアスベストがさまざまな形で使用されていたことが問題視されています。以下に、RC造特有の施工法とアスベストの関係性を解説します。
1. 吹き付け施工とアスベストの使用
RC造建物の柱や梁、天井などには、耐火性や断熱性を向上させるためにアスベストを含む吹き付け材が使われていました。しかし、経年劣化によって吹き付け材が剥離し、アスベスト粉じんが飛散するリスクがあります。
・使用箇所の例: 天井裏、柱の耐火被覆、機械室の壁面など
・リスク: 特に改修や解体時に粉じんが飛散しやすい
2. 型枠を活用したコンクリート打設と断熱材の併用
RC造では、型枠を設置してそこにコンクリートを流し込む施工法が一般的です。この際、型枠に取り付けられる断熱材として、アスベストを含む製品が使われることがありました。断熱性能やコストの面でアスベスト材が重宝されていたのです。
・使用箇所の例: 壁の内側、配管周囲の断熱材
・リスク: 見えない部分に隠れているため、解体時に初めて気づくケースが多い
3. 接着剤やモルタルに含まれるアスベスト
RC造の建物では、コンクリートと仕上げ材を固定するために接着剤やモルタルが使用されます。これらの製品の一部にアスベストが含まれていることがありました。施工時には固体状態で問題がなくても、リフォームや解体の際に砕かれることで粉じんが発生します。
・使用箇所の例: 内装仕上げ材の裏面、外壁タイルの接着部分
・リスク: 粉じんが目に見えない形で広がる可能性
4. 大型構造物の耐火・耐熱被覆
RC造の構造は、耐火性を向上させるために耐火被覆材が施されます。この被覆材にアスベストが含まれるケースがあり、鉄筋コンクリートの柱や梁、天井部分に施工されることが一般的でした。この施工法は、特に高温環境や火災リスクが高い施設で広く採用されていました。
・使用箇所の例: 高層ビルの柱、機械室の耐火材
・リスク: 高所施工が多く、劣化で周辺環境に影響を与える
アスベスト飛散のリスクと解体やリフォーム時の注意点
ここでは、経年劣化によるアスベスト飛散のリスクとRC造の解体・リフォームに伴う注意点について詳しく解説します。
劣化によるアスベスト飛散のプロセス
1.経年劣化や外部要因による破損
アスベストを含む建材が長期間使用されると、湿気、温度変化、振動などの影響で表面が劣化したり、ひび割れが生じます。また、地震や施工時の振動も破損を引き起こす原因となります。
2.繊維状のアスベストの露出
劣化により建材内部のアスベスト繊維が露出します。特に、吹き付け材やスレート材などの脆弱な部分では繊維が剥離しやすくなります。
3.粉じんとしての飛散
アスベスト繊維は非常に軽いため、建材が剥がれたり加工される際に微細な粉じんとなり、空気中に浮遊します。風や空調設備によって周囲に拡散する可能性が高まります。
4.吸入による健康被害のリスク
飛散したアスベスト粉じんが人の呼吸によって吸い込まれると、肺に沈着し、重篤な健康被害を引き起こす可能性があります。
RC造の解体やリフォーム時の注意点
1.事前調査の実施
解体やリフォーム前に、アスベスト含有建材の有無を専門業者による調査で確認します。アスベストが使用されている場合、法律に基づいた対応が必要です。
2.適切な作業計画の立案
アスベスト含有建材が確認された場合、安全な作業手順を計画し、飛散防止対策を徹底します。封じ込めや囲い込みなどの措置を検討します。
3.専門業者への依頼
アスベスト除去は資格を持つ専門業者に依頼する必要があります。無資格での除去作業は法律で禁止されており、健康被害や環境汚染のリスクがあります。
4.飛散防止対策の徹底
作業中は水を使った湿潤化処理や防護シートの使用などで粉じんの飛散を防ぎます。また、作業現場の封鎖や周囲への注意喚起も行います。
5.法規制の遵守
解体・除去作業は、関係法令(石綿障害予防規則や大気汚染防止法など)を守りながら進めます。特に産業廃棄物としての適切な処分が重要です。
RC造アスベスト調査の流れと注意点
ここでは、RC造建築に使用されているアスベストの事前調査や調査後の対応について詳しく解説します。
事前調査の重要性と具体的な方法
解体やリフォーム前に行うアスベストの事前調査は、法律で義務付けられており、安全な作業の基盤となります。調査を怠ると、作業中にアスベストが飛散し、健康被害や環境汚染を引き起こすリスクがあります。また、法令違反による罰則や工事遅延につながる可能性もあります。
《具体的な調査方法》
1.図面や施工記録の確認
建築時の図面や仕様書からアスベスト使用の可能性がある部位を特定します。
2.目視調査
専門家が現場を訪れ、アスベストが使用されていそうな建材(天井材、吹き付け材、断熱材など)を確認します。
3.サンプリングと分析
疑わしい建材を採取し、専門機関でアスベスト含有の有無を顕微鏡分析などで確認します。
《注意点》
・資格を持つ専門業者に依頼:調査は国家資格を有する専門業者に依頼する必要があります。
・現場の安全確保:調査中も粉じんが飛散しないよう、湿潤化処理などを行います。
・結果に基づく計画立案:調査結果に応じて適切な対策や作業計画を立てます。
調査後の対応ステップ
1.調査結果の確認と報告
調査結果を基に、アスベスト含有建材の有無と使用箇所を特定し、詳細な報告書を受け取ります。
2.除去・封じ込め・囲い込みの選択
アスベスト含有建材が確認された場合、その状態や工事内容に応じて以下の対応方法を選択します:
・除去:完全に撤去する方法(解体時など)
・封じ込め:表面を覆い飛散を防ぐ方法(リフォーム時)
・囲い込み:周囲を密閉し接触を避ける方法(使用継続時)
3.専門業者への依頼
対応はアスベスト作業の資格を持つ専門業者に依頼します。無資格の作業は法律で禁止されています。
4.作業計画の作成
工事スケジュールや飛散防止対策を明確にした計画を立てます。計画には法令順守の対応が求められます。
5.安全対策と周囲への配慮
作業時には現場を封鎖し、防護シートや湿潤化処理を徹底します。周囲の住民や関係者への事前説明も重要です。
6.最終確認と廃棄処理
作業後、飛散がないか最終確認を行い、アスベスト廃棄物は適切に処理します。
RC造建築で実践するアスベスト対策
ここでは、RC造建築においてのアスベスト対策と専門業者を選ぶ際のポイントについて詳しく解説します。
除去・封じ込め・囲い込みの違いと選択基準
1. 除去
・概要: アスベスト含有建材を完全に撤去し、建物から取り除く方法。
・適用場面: 解体工事や大規模リフォーム時。
・メリット: リスクを根本的に排除できる。
・注意点: 高額な費用と時間がかかり、資格を持つ専門業者が必要。
2. 封じ込め
・概要: アスベスト建材の表面を特殊なコーティング材で覆い、粉じんの飛散を防ぐ方法。
・適用場面: 使用を続ける建物で建材が劣化している場合。
・メリット: コストが比較的低く、短期間で実施可能。
・注意点: 建材自体は残るため、将来的な除去が必要になる場合がある。
3. 囲い込み
・概要: アスベスト含有建材を周囲から密閉し、接触や飛散を防ぐ方法。
・適用場面: 天井裏や壁の中など目に触れない箇所で使用される場合。
・メリット: 簡易な施工で安全性を確保できる。
・注意点: メンテナンス時に再び対応が必要になることがある。
《選択基準》
・建物の用途や状況: 使用中の建物なら封じ込めや囲い込み、解体やリフォーム時は除去が適切。
・リスクの程度: 劣化が進んでいる場合や健康被害の可能性が高い場合は除去を優先。
・予算と工期: コストや作業時間に応じて最適な方法を選択。
・法令遵守: 対応方法が関連法規に適合していることを確認。
専門業者を選ぶ際のチェックポイント
1.資格と許可の確認
アスベスト除去には、国家資格(特定建設業許可、石綿作業主任者など)が必要です。資格保有者が在籍しているか確認します。
2.実績と経験
過去の施工実績やアスベスト除去の経験が豊富である業者を選びましょう。事例や口コミが参考になります。
3.調査から処分まで一貫対応可能か
アスベスト調査、除去、廃棄処理を一括して対応できる業者を選ぶとスムーズです。
4.法令遵守の姿勢
作業計画や安全対策が法律に基づいているかを確認します。事前に計画書の提出を求めましょう。
5.見積もり内容の透明性
作業内容、費用の内訳が明確で、追加料金が発生しないか確認します。
6.安全対策の徹底
飛散防止策や作業現場の封鎖など、安全対策がしっかりしているかを確認します
7.アフターフォローの有無
作業後の安全確認や相談対応がある業者を選ぶと安心です。
アスベスト対策にかかる費用と法の規制
ここでは、アスベスト対策にかかる費用の相場や作業スケジュール、最新の法規制について詳しく解説します。
費用相場と作業スケジュールの目安
《費用相場》
1.事前調査
・費用:10万~30万円程度(建物規模や調査範囲による)
・内容:アスベスト使用の有無を確認する調査。
2.アスベスト除去
・費用:1㎡あたり3万~5万円程度(建材の種類や施工方法による)
・全体費用:数十万円~数百万円(規模や状況に応じて変動)。
3.封じ込め・囲い込み
・費用:1㎡あたり1万~3万円程度
・除去より低コストだが、長期的な対応が必要になる場合も。
《作業スケジュールの目安》
1.事前調査
・所要時間:1日~数日(サンプリング後の分析に1~2週間必要)。
2.除去作業
・作業期間:数日~1週間程度(規模により延長)。
・工程:現場封鎖、湿潤化処理、除去作業、飛散確認。
3.封じ込め・囲い込み
・作業期間:1~3日程度(簡易な施工の場合)。
4.最終確認と廃棄処理
・所要時間:1~2日。作業後の安全確認と廃棄物処分を実施。
費用やスケジュールは建物の規模や状況により異なるため、事前に見積もりを依頼し、具体的な計画を立てることが重要です。
最新の法規制と遵守すべきポイント
《最新の法規制(2025年時点)》
1.石綿障害予防規則(石綿則)
・アスベスト含有建材の取り扱い作業では、事前調査と作業計画書の作成が義務化されています。
・作業中の飛散防止措置(湿潤化処理、密閉作業エリアの確保など)が厳格に求められます。
2.大気汚染防止法
・アスベスト含有建材を撤去する場合、地方自治体への届け出が必要です。
・飛散防止のための適切な措置が義務付けられています。
3.廃棄物処理法
・アスベスト廃棄物は「特別管理産業廃棄物」として適切に処理しなければなりません。
・許可を持つ業者に依頼し、処理後のマニフェストを保管することが必要です。
《遵守すべきポイント》
1.事前調査の徹底
資格を持つ調査者による建材の確認を必ず行い、調査結果を元に計画を立てます。
2.資格を持つ専門業者の起用
除去作業は、認可を受けた業者が行う必要があります。無資格作業は禁止されています。
3.作業中の安全対策
作業区域を密閉し、飛散防止措置を講じたうえで作業を実施します。
4.届け出と報告の義務
地方自治体への届け出を行い、規定通りの手順で作業を進めます。
最新の法規制を遵守することで、安全性を確保し、違法行為やトラブルを防ぐことができます。
まとめ
RC造(鉄筋コンクリート造)の建物は、その耐久性や耐火性から広く採用されていますが、特に古い建物ではアスベストが使用されている可能性があり、適切な対応が求められます。アスベストは劣化や解体時に飛散し、健康や環境へのリスクを引き起こすため、事前調査や安全対策が欠かせません。
アスベストが使用されやすい部位や「除去」「封じ込め」「囲い込み」などの対策方法や最新の法規制に基づく対応手順、資格を持つ専門業者の役割についても触れ、安全で効率的なアスベスト管理の方法を紹介しました。
RC造建物の安全を維持するためには、正しい知識をもとに計画的に対応することが重要です。調査の実施から施工管理まで、法令を遵守しながら進めることで、安心して建物を活用することができます。この記事を参考に、快適で安全な住環境づくりを進めていきましょう。