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アスベスト関連工事に必要な資格は?【2025年最新完全ガイド】

アスベスト(石綿)に関わる工事では、誰が何をするかで必要な資格が変わります。
実務では「調査する人」「除去等を監督する人」「実際に作業する人」「分析を担う人」で必要な要件が異なり、誤解や取りこぼしが起きがちです。本記事は最新制度を踏まえ、資格の違いや取得ルートと日数・費用の相場報告や記録保存、罰則まで実務に直結する形で解説していきます。

アスベストに関する作業には原則的に資格が必要

アスベスト関連工事では、すべての作業に同一の国家資格が要るわけではありません。工事前の事前調査は有資格者(厚生労働大臣が定める講習修了者等)に限定され(建築物は2023年10月1日から、工作物は2026年1月1日から)、除去・封じ込め等の作業は「石綿作業主任者」の選任と、作業従事者への特別教育(受講記録は3年保存)の実施が義務です。つまり、担当する役割(調査/監督/実作業/分析)ごとに、必要となる資格・教育・体制の要件が決まっていきます。

アスベスト事前調査をする人に必要な資格

工事における担当業務によって、必要となる資格が決まります。

建築物石綿含有建材調査者

建築物の解体・改修に先立つ「事前調査」を行うための有資格者(厚生労働大臣が定める講習修了者等)です。2023年10月1日以降に着工する建築物の工事では、この資格者(または経過措置の登録者)による事前調査が必須になっています。

  1. 一般建築物:すべての建築物を調査可能。
  2. 一戸建て等一戸建て住宅・共同住宅の“住戸内部(専有部)に限定”。共用部は対象外なので注意
  3. 特定建築物:一般の内容に実地研修+口述試験が加わる上位区分で、全ての建築物を調査可能。

制度の背景

2021/4/1〜:全工事で事前調査・記録3年保存を義務化。

2023/10/1〜:建築物の事前調査は資格者限定

2026/1/1〜:工作物も資格者限定(別講習)。

いずれも厚労省の「改正ポイント」で明示されています。

主な受講資格

  1. 石綿作業主任者技能講習修了者
  2. 大学において、建築に関する課程を修めて卒業した後、建築に関して2年以上の実務経験を有する者
  3. 短期大学において、建築に関する課程を修めて卒業した後、建築に関して3年以上の実務経験を有する者
  4. 高等学校または中等教育学校において、建築に関する課程を修めて卒業した後、建築に関して、7年以上の実務経験を有する者
  5. 建築に関して11年以上の実務経験を有する者
  6. 特定化学物質等作業主任者技能講習を修了した者で、建築物石綿含有建材調査に関して5年以上の実務経験を有する者

※受講資格はこの他にも規定されています。詳細は、建築物石綿含有建材調査者講習登録規程第7条をご覧ください。

アスベスト除去等の現場を指揮・監督する人

石綿作業主任者(技能講習修了者)

石綿作業主任者は、石綿(アスベスト)を取り扱う工事現場で必ず選任しなければならない有資格者です。特別な実務経験は不要で、満18歳以上であれば誰でも受講可能。建築物の解体や改修、石綿除去などの作業において、労働者の安全管理や作業方法の監督を行います。

要するに、「年齢18歳以上」であれば誰でも受講でき、2日間の講習+試験に合格すれば資格を得られるという条件になります。

アスベスト工事を実際に作業する従事者

アスベスト工事の現場で実際に作業するには、特別な資格試験までは不要ですが、必ず 「石綿取扱作業従事者特別教育」 を受けて修了証を持っていることが条件です。

アスベストを含む建材を切断・研磨・除去すると、目に見えない繊維が空気中に飛散し、吸い込むことで健康被害(石綿肺、中皮腫、肺がんなど)を引き起こす危険があります。

そのため、実際に現場でアスベストを扱う作業員は、必ず 「石綿取扱作業従事者特別教育」 を受講し、修了証を取得しなければなりません。

アスベスト調査工事を行う際のリスクは?

アスベストの資格は、アスベストの健康リスクを防ぎ、建物の解体・改修工事を安全に進めるために、調査や作業現場で求められます。様々なリスクを伴いますので適切な資格を持つ専門家に依頼することが重要です。

法的リスク

アスベスト調査、工事は厳しい法規制のもとで実施しなければなりません。無資格で調査や作業を行った場合や、定められた基準に違反した場合には、懲役刑や罰金、工事停止命令といった法的処分が科される可能性があります。

労働安全衛生法・石綿障害予防規則(厚労省)

この法律は、作業者の健康と安全を保護することを主目的としています。違反に対する罰則は主に作業者へのばく露防止義務に関するものです。

違反内容詳細罰則
作業者保護のコア義務違反隔離・負圧、湿潤化、立入禁止、保護具の着用、石綿作業主任者の選任、特別教育などの義務に違反した場合。6か月以下の懲役または50万円以下の罰金
その他の義務違反労基署への届出や健康診断の実施などの義務に違反した場合。50万円以下の罰金

大気汚染防止法(環境省)

この法律は、アスベスト粉じんの周辺環境への飛散を防止することを主目的としています。違反に対する罰則は、主に近隣住民や環境への影響を防ぐためのものです。

違反内容詳細罰則
作業基準違反の直接罰隔離せずに吹付け石綿を除去するなど、作業基準に反した場合3か月以下の懲役または30万円以下の罰金
作業基準適合命令等への違反行政からの作業基準適合命令や作業停止命令に従わない場合6か月以下の懲役または50万円以下の罰金
事前調査結果の電子報告義務違反一定規模の工事で事前調査結果の電子報告を怠った場合30万円以下の罰金

健康リスク

アスベスト(石綿)を吸入すると、石綿肺、中皮腫、肺がんといった疾患のリスクが高まります。アスベストの曝露から20〜40年という非常に長い潜伏期間を経て発症することが特徴で、少量でも吸入すれば健康リスクにつながります。

石綿肺(じん肺)

アスベストを大量に吸入することで肺が線維化し、呼吸困難を引き起こす病気です。

中皮腫

胸膜や腹膜にできるがんの一種で、アスベスト曝露が原因となることがあります。

肺がん

石綿による悪性腫瘍で最も発症数が多いとされており、肺がんになるリスクが高まります。

良性胸膜疾患

アスベストばく露による胸膜の炎症反応によって引き起こされる良性の病変です。これ自体が直接的なリスクとなることは少ないですが、将来的な重篤な疾患の発症の恐れがあります。

社会的・経済的リスク

違法なアスベスト関連工事は、法的罰則だけでなく、深刻な社会的・経済的リスクも伴います。これらのリスクは、企業の存続や将来に大きな影響を与える可能性があります。

企業の信用失墜とブランド価値の低下

違法工事やアスベスト飛散事故が報じられると、企業はかなりの損失になります。これは顧客、取引先、地域社会、そして従業員からの信頼を失い、長期的なブランド価値の低下につながります。結果として、新規顧客の獲得やビジネスの継続が難しくなる可能性があります。

工事停止と経済的損失

行政による作業停止命令は、工事の遅延や中止を意味します。これにより、以下の経済的損失が発生します。 工事の遅延や中断により、発注者との契約内容が履行できず、違約金や損害賠償を請求される可能性があります。

訴訟リスクと多額の賠償金

アスベスト飛散事故によって健康被害を訴える人々(周辺住民や元作業員など)からの訴訟リスクは非常に高いです。訴訟に発展した場合、企業は多額の弁護士費用や賠償金を支払う可能性があり、これは財務状況に致命的な打撃を与える可能性があります。長期間にわたる訴訟は、企業の経営資源を消耗させます。

これらのリスクを回避するためには、法律で定められた基準を厳守し、事前の調査から適切な作業計画の策定、そして安全な施工管理まで、全てのプロセスでコンプライアンスを最優先することが不可欠です。

アスベスト調査工事は専門家に頼むのがおすすめ

アスベスト関連の工事や調査は、一見すると「小規模だから問題ないだろう」「経験があるから大丈夫」と軽視されがちですが、法令で求められる要件は年々強化され、違反した場合の罰則や社会的影響は非常に大きくなっています。資格を持たないまま調査・作業を行うことは、作業者や周囲の住民の健康を危険にさらすだけでなく、企業や発注者自身が法的責任を問われる重大なリスクです。

そのため、アスベストの取り扱いにあたっては、必ず資格を持つ調査者・主任者・分析機関などの専門家に依頼し、調査から施工、記録保存、報告までを適正に実施することが重要です。これにより、法律違反による罰則や社会的信用の失墜といったリスクを回避し、安全かつ円滑に工事を進めることができます。

「専門家に頼む」という選択肢はコストではなく、健康・法令遵守・企業の信頼を守るための投資だと言えるでしょう。

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