「アスベストの調査費って、いったい誰が払うの?」
そんな疑問を抱えたまま、解体やリフォームの話が進んでしまうケースが少なくありません。特に近年では、建築物に含まれるアスベストの調査が法律で義務づけられたこともあり、これまで意識してこなかった「調査費用」という問題が、工事の段階で突然浮上することがあります。
ところがこの費用、誰がどのタイミングで負担するのかが曖昧なまま進めてしまうと、施主と業者の間で思わぬトラブルを招く原因になりかねません。「見積もりに入っていない」「費用の説明がなかった」など、実際に現場で起きている声も多く、費用の分担をめぐるすれ違いは決して他人事ではないのです。
この記事では、アスベスト調査とはどのようなもので、どんな場面で必要になるのかを整理しながら、その費用は誰が支払うべきなのかについて、ケース別にわかりやすく解説していきます。また、費用をめぐるトラブルを未然に防ぐための確認ポイントや注意点についても触れていますので、これから工事を検討している方はぜひ参考にしてみてください。
アスベストの調査費用は誰が払うのか?

ここでは、アスベストの調査費用がどんな場面で必要になるのか、また費用の相場、法律に基づく義務などについて詳しく解説します。
どんな場面でアスベスト調査が必要になるのか
アスベスト調査は、大気汚染防止法および石綿障害予防規則に定められた、建築物等の解体・リフォーム工事の際、下記を除いて全ての工事において実施することが義務付けられています。
第3条に基づく事前調査が不要なケース(例外)
ア.明らかに石綿を含まない材料の簡易な除去作業
木材、金属、石、ガラス、畳、電球など、石綿が含まれていないことが明白な材料。
手作業や電動ドライバーなどで容易に取り外せ、周囲を損傷させるおそれのない作業。
イ.極めて軽微な損傷にとどまる作業
釘の打ち込みや釘抜きなど、石綿が飛散する可能性がほとんどない作業。
※ただし、電動工具で壁に穴を開ける作業などは対象外(=事前調査が必要)。
ウ.材料を除去しない新設作業
既存の塗装の上に新たに塗装を塗るなど、既存材料を取り除かない作業。
エ.関係省庁が石綿不使用を確認した特定工作物・船舶の作業
国土交通省、経済産業省、農林水産省、防衛装備庁が石綿不使用を確認した構造物・船舶に対する解体・改修作業。
アスベストは、昭和の時代を中心に多くの建材に使われてきました。耐火性や断熱性に優れていたことから、アスベストを含む建材がごく一般的に使用されていたのです。
しかし、アスベストが飛散すると健康被害のリスクがあるため、現在では原則として使用が禁止されています。とはいえ、過去に建てられた建物の中には、今もなおアスベストを含む材料が使われたまま残っているケースが数多くあります。
また、解体や改修の際には、事前にその建物にアスベストが含まれているかどうかを調査することが、法令で義務づけられている工事もあります。
具体的には、延床面積が80㎡以上の解体工事や、100万円以上のリフォーム工事を行う場合などが該当します。これらに該当する工事を行うには、石綿含有の有無を事前に確認し、必要があれば分析調査を行うことが必要になります。さらに、調査結果の報告を自治体へ届け出る義務もあります。
アスベスト調査を怠ると、法令違反となるだけでなく、作業員や周囲の人々への健康被害を引き起こす可能性もあるため、「知らなかった」では済まされない重要なプロセスとなっています。
調査の種類とその費用相場
アスベストの調査には、大きく分けて「書面調査(事前調査)」と「現地での目視調査」、さらに必要に応じて行う「分析調査」の3つのステップがあります。それぞれの方法によって、作業内容も費用も異なるため、あらかじめ知っておくことが大切です。
まず最初に行われるのが「書面調査」です。これは、建物の設計図や施工記録などをもとに、アスベストが使用されている可能性があるかどうかを確認する作業です。この段階では現地での採取などは行わないため、費用は比較的安く、数千円~1万円前後で対応している業者もあります。
書面調査でアスベストの可能性があると判断された場合には、次に「目視調査」が行われます。専門の調査員が現地に出向き、実際の建材や施工状況を確認する工程です。この段階でアスベストの有無を確定することはできませんが、使用の疑いが強ければ、さらに詳しい調査が必要になります。目視調査の費用は、1件あたり2万~5万円程度が目安となります。
疑いのある建材について、より正確な判断を下すためには、「分析調査(試料分析)」が行われます。これは、建材の一部をサンプルとして採取し、専門の分析機関でアスベストの有無や種類を調べるものです。調査対象の数や範囲によって費用は異なりますが、1検体につき2万円〜3万円前後が相場とされています。複数の箇所を調べる場合には、費用もその分かさみます。
全体として、建物の規模や調査範囲にもよりますが、調査全体で数万円から十数万円ほどかかることが一般的です。解体や改修工事を行う前には、この調査費も見積もりの一部としてしっかり確認しておくことが重要です。
法律に基づく義務と罰則
アスベストは、かつて「夢の建材」とも呼ばれて多くの建築物に使用されてきましたが、健康被害のリスクが明らかになったことで、現在では使用・製造ともに全面禁止となっています。
しかし、過去に建てられた建物の中には、今もなおアスベストを含んだ建材が多く残されており、解体やリフォームの際に飛散する恐れがあるため、法律で厳しく管理されるようになりました。
2022年4月からは、大気汚染防止法の改正により、一定の規模以上の工事においては、工事前にアスベストの有無を調査することが義務化されました。この調査を「事前調査」と呼び、原則としてすべての建築物の解体工事や、一定規模以上のリフォーム・改修工事が対象となります。
- 具体的には、
- 延床面積80㎡以上の建物の解体
- 請負金額が100万円以上の改修・補修工事
- 請負金額が100万円以上で塗装・内装などの特定作業が含まれる工事
これらに該当する場合は、有資格者による目視調査および必要に応じた分析調査が必須となります。さらに、調査結果は地方自治体に報告する義務もあり、未報告のまま工事を始めることは認められていません。
これらの義務を怠った場合、行政指導や工事の中止命令、最悪の場合は罰則が科されることもあります。たとえば、虚偽の報告や未報告で工事を進めた場合には、最大で30万円以下の罰金が課されることがありますし、悪質な場合には企業名が公表されることもあります。
こうした背景からも、アスベスト調査は単なる「確認作業」ではなく、法的に求められる重要な手続きなのです。安全のためにも、信頼できる専門業者と連携し、適切な流れで調査と報告を行うことが欠かせません。
調査費用ケース別で解説

ここでは、ケース別にみた調査費用負担の所在や注意点について詳しく解説します。
【個人所有の住宅】所有者が原則負担
個人で住宅を所有している場合、アスベストの調査費用は基本的に「建物の所有者」が負担するのが原則です。
たとえば、自宅を取り壊して新築を建てるケースや、リフォームを計画しているといった場合、工事を発注するのは施主自身になります。そのため、調査を含む全体の費用も、工事費の一環として自己負担することになります。
特に、築年数が古い住宅では、アスベストが使われている可能性があるため、事前調査が義務づけられています。
施工会社から「調査が必要です」と説明されることが多いですが、その時点で費用の内訳や金額をしっかり確認しておくことが重要です。
見積書に「アスベスト調査費」が明記されていないまま工事が進んでしまうと、後になって追加費用が発生するケースもあります。
また、「リフォームの範囲が小さいから関係ない」と思われるかもしれませんが、100万円を超えるような工事や、壁や天井など建材に触れる作業が含まれる場合には、調査が必要になることもあるため注意が必要です。
費用の負担者が不明確なままだと、工事の途中で話がこじれてしまう可能性もあります。トラブルを避けるためにも、調査の必要性と費用負担について、契約前に業者としっかり確認し、書面で残しておくことをおすすめします。
【賃貸物件】貸主?借主?工事業者?契約内容によるケースも
賃貸物件におけるアスベスト調査費用の負担は、「誰がどの工事を行うか」によってケースバイケースです。一概に「貸主(大家さん)が払う」「借主(入居者)が負担する」とは言い切れず、契約書や工事内容によって責任の所在が異なるため、特に注意が必要な場面と言えます。
たとえば、建物全体の外壁や屋根の補修といった建物の所有者に関わる大規模工事の場合、アスベスト調査も含めて原則として貸主が費用を負担するのが一般的です。
建物の維持管理は貸主の責任に含まれるため、これに伴う調査費も貸主側の持ち出しとなります。
一方で、借主の希望で室内をリフォームしたり、内装の変更を行ったりする場合、たとえばテナントが事務所の壁を取り払ってレイアウト変更をしたいといったケースでは、その工事に伴って必要となるアスベスト調査費用も、借主が負担することになることがあります。これは、「改装の主体が誰か」が判断の分かれ目になるからです。
また、ビルのオーナー・入居企業・工事業者の三者が関わるようなテナント工事では、調査費用を誰が持つかを事前に取り決めておかないと、着工直前でトラブルになることもあります。
こうした状況を避けるためにも、賃貸契約書や工事契約書の中に「アスベスト調査が必要になった場合の費用負担」について、明確な記載があるかどうかを必ず確認しましょう。もし記載がなければ、事前に話し合いをして、書面に残しておくことが安心につながります。
【法人所有の建物】発注者負担が基本
法人が所有するビルや施設などを解体・改修する場合、アスベストの調査費用は工事を発注する側=所有法人が負担するのが基本です。これは、個人所有の住宅と同じく、「建物の所有者がリスク管理の責任を持つべき」という考え方に基づいています。
たとえば、自社所有のオフィスビルをリノベーションしたり、工場の一部を改修したりするときには、工事前にアスベストの有無を調べる必要があります。この調査費用は、工事費と同様に建物を管理・運営する法人側の経費として見積もりに含められるのが一般的です。
ただし、実務上では「テナント企業が内装工事を発注する場合」や「一部スペースだけの改修」など、少し複雑なケースもあります。こうした場合でも、工事の主体が誰か(誰が依頼し、誰が工事費を支払うのか)によって調査費の負担者が決まるため、必ず契約時に確認が必要です。
また、法人所有の建物ではコンプライアンス(法令順守)や安全管理がより重視される傾向にあるため、調査を怠ったことで罰則を受けたり、社名が公表されるといったリスクも伴います。
そのため、アスベスト調査は「コスト」としてではなく、リスク回避のための必要な業務プロセスとして捉える企業が増えています。
建物の資産価値や社会的信頼を守るためにも、法人としての立場で早めに調査を依頼し、調査費用も含めた予算管理を行っておくことが大切です。
【売買時・譲渡時】トラブルが起きやすいので要注意
建物や土地の売買・譲渡の場面では、アスベストの調査費用を「誰が負担するのか」で揉めるケースが少なくありません。
というのも、売主と買主の間で「調査をすべきかどうか」「もしアスベストが見つかったら誰が除去するのか」といった認識にズレがあることが多く、契約後に発覚してトラブルになるリスクが高いからです。
たとえば、築年数の古い建物を購入してリノベーションしようとしたところ、アスベストが含まれていたことが後から判明し、除去費用まで買主が負担することになったという事例もあります。
逆に、売主側が「現状有姿(ありのままの状態)で売却するつもりだった」として責任を否定する場面もあり、責任の線引きが非常にあいまいになりやすいのです。
法律上、売買契約書の中にアスベストに関する特別な記載がなければ、原則として売主には明確な調査義務はありません。
しかしながら、近年は安全意識の高まりから、買主が安心して購入できるよう、引き渡し前にアスベスト調査を行って報告書を添付する例も増えています。
これは、後からのトラブル回避や建物価値の明確化にもつながるため、不動産業者や司法書士などの仲介者が積極的に提案しているケースも見られます。
重要なのは、売買契約時点で「アスベストに関する取り扱い」を明文化しておくこと。
調査を誰が行うのか、費用は誰が出すのか、万が一含有が見つかった場合の対応方法などを事前に取り決め、書面で合意しておくことで、後の誤解や責任の押し付け合いを防ぐことができます。
建物の売買や相続は、一度契約が成立すると後戻りができません。後悔しないためにも、アスベストのリスクとその扱いについては慎重に確認し、納得したうえで進めることが大切です。
なぜ「誰が払うか」で揉めるのか?トラブルの実例と予防策

ここでは、支払い時点で発生する可能性があるトラブルや注意点について詳しく解説します。
「見積りに入っていなかった」
アスベスト調査に関するトラブルで特に多いのが、「見積もりにその費用が含まれていなかった」というケースです。
解体工事やリフォームの見積もりをもらって安心していたのに、いざ着工前になって「アスベストの事前調査が必要です。その分の費用が別途かかります」と言われ、戸惑った経験がある方も少なくありません。
このようなトラブルは、見積書の内容を細かく確認せずに契約を進めてしまった場合や、業者側から十分な説明がなかった場合に起きやすくなります。アスベストに関する費用は、現場の状況によって変動しやすいため、あえて「別途見積もり」としている施工会社もありますが、施主側がその意味を理解していないと、後から「話が違う」と感じる原因になります。
また、リフォームの場合は、壁や天井を剥がして初めてアスベストの有無がわかることも多いため、調査費用があらかじめ明記されていないこと自体は珍しくありません。
とはいえ、だからこそ最初の段階で、「アスベスト調査が必要になる可能性はありますか?」「費用は見積もりに含まれていますか?」と、こちらから確認しておく姿勢が大切です。
万が一、アスベストの含有が見つかった場合は、調査だけでなく除去や処理にも追加費用が発生することになります。調査費が数万円で済んでも、除去費用はその何倍にもなることがあるため、「見積もりにない=発生しない」ではないという意識を持っておくことが、後悔しないための第一歩です。
「調査の義務があるとは知らなかった」
「アスベスト調査って、やらなきゃいけないんですか?」
解体や大規模なリフォームを初めて経験する人の中には、そう口にする方も少なくありません。特に一般住宅の所有者や小規模なテナント事業者にとっては、アスベスト調査が法的に義務化されていること自体を知らなかったというケースが非常に多いのです。
しかし現在、日本では一定規模以上の解体・改修工事において、事前のアスベスト調査が法律で義務づけられています。
この規定は2022年の大気汚染防止法の改正によって強化され、建物の種類や工事の内容に応じて、有資格者による調査や自治体への報告が必要となりました。
つまり、「知らなかった」「教えてもらっていなかった」では済まされない時代に入っているのです。
義務を怠ったまま工事を進めてしまうと、後から行政指導や工事停止命令を受けることもあり、最悪の場合は罰則が科されるリスクもあります。たとえ善意であっても、結果的に法律違反となってしまえば、施主としての信頼や責任も問われかねません。
多くの場合、「業者に任せておけば大丈夫だと思っていた」という声が聞かれますが、業者側でも説明不足のまま工事が始まることもあるため、施主自身が最低限の知識を持っておくことが、トラブルを防ぐ最大のカギになります。
安心して工事を進めるためにも、「この工事では調査が必要なのか?」「誰が行い、どのように報告されるのか?」を事前に確認し、信頼できる業者にしっかりと依頼することが大切です。
契約書・見積書の段階での注意点
アスベスト調査をめぐるトラブルの多くは、契約前の「確認不足」から始まります。
見積書に明記されていなかった、契約書に調査や報告の取り決めがなかった。そんな些細な見落としが、後になって大きな誤解や金銭トラブルへと発展することも珍しくありません。
まず、見積書を受け取ったら、「アスベスト調査」に関する項目が含まれているかを必ず確認しましょう。特に、建物が古い場合や工事の範囲が広い場合は、調査が必要になる可能性が高く、費用が「別途見積り」と書かれていることもあります。その場合、「後からいくらかかるのか」「調査の範囲はどこまでか」など、できる限り詳細な説明を受けておくことが大切です。
契約書についても同様に、アスベスト調査の実施者・費用の負担者・調査結果の取り扱いについて記載があるかをチェックしてください。とくに注意したいのは、「工事費にすべて含まれていると思っていたのに、あとで別請求が来た」というケース。これは、契約書に具体的な文言がなかったために起こる典型的なトラブルです。
たとえば、
・「アスベスト調査・報告に関する費用は発注者が負担するものとする」
・「アスベストの含有が判明した場合は、別途協議のうえ対応を決定する」
などの一文があるだけでも、万が一のときの対応がスムーズになります。
また、業者によっては調査や報告の手配を外部に委託していることもあり、その場合は責任の所在が曖昧になることがあります。調査機関の名前や資格の有無も事前に確認しておくと、より安心です。
つまり、契約や見積もりの段階で「聞かなくても大丈夫だろう」と思わず、疑問に思ったことは必ず確認し、必要であれば書面に残しておくことが、後の安心につながるのです。
費用の事前確認・共有の大切さ
アスベスト調査を含む工事費用のトラブルで、特に多いのが「そんな費用がかかるなんて聞いていなかった」という声です。
こうした行き違いの多くは、工事前に費用の内容や負担者について、きちんと確認・共有していなかったことが原因です。
アスベストの調査や除去は、状況によっては数万円から十数万円、それ以上になることもあります。そのため、「後から追加で請求されるとは思わなかった」「予算をオーバーして困った」といった事態に陥る前に、どのタイミングで、何に、いくらかかるのかを明確にしておくことがとても重要です。
特に、リフォームや解体工事のように工程が多い工事では、最初の見積書にすべてが含まれているとは限りません。
「アスベスト調査費:別途見積もり」や「必要に応じて追加費用が発生する場合あり」といった記載がある場合は、「実際にいくらくらいを見込んでおくべきか」や「どの段階で判断するのか」を具体的に確認しておくと安心です。
また、家族や関係者、法人内での意思決定が必要な場合は、工事前に調査費用の存在とその負担について関係者全体で共有しておくことも忘れてはいけません。
誰が費用を出すのかが曖昧なままだと、いざ請求が来たときに「そんな話は聞いていない」とトラブルになりかねません。
トラブルを未然に防ぐためには、費用について「口頭で確認したから安心」ではなく、「書面やメールなど、記録に残る形で共有する」ことが基本です。工事の円滑な進行と、後悔のない選択のためにも、事前の確認と合意形成を丁寧に行っておきましょう。
調査費用をトラブルなく進めるための3つのチェックポイント

ここでは、調査費用に関して、スムーズに進めるためのチェックポイントについて詳しく解説します。
見積もり段階で「アスベスト調査」の項目を確認
工事を進める前に最も重要なことのひとつが、見積もり内容を細かく確認することです。中でも注意したいのが、「アスベスト調査」に関する記載があるかどうか。
「調査費が含まれていない」「別途費用と言われていたけれど金額を聞いていなかった」このようなトラブルは、すべて見積もり段階での確認不足から起こります。
まず、見積書に「アスベスト調査費」や「事前調査」といった明確な記載があるかをチェックしましょう。記載がある場合でも、その内容が具体的かどうかが大切です。
たとえば、「調査一式」とだけ書かれている場合、どこまでの範囲を含んでいるのか、何回の訪問で完了するのか、分析費用は含まれているのかなど、詳細を確認しておかないと、後で追加費用が発生する可能性もあります。
逆に、アスベストに関する記載がまったく見当たらない場合は、「この工事でアスベスト調査は不要なのか」「必要になった場合の対応と費用はどうなるのか」を業者に直接たずねることがとても大切です。
とくに築年数が古い建物では、調査が法的に義務となっていることもあるため、業者任せにせず、自ら確認する姿勢が後の安心につながります。
また、工務店やリフォーム会社によっては、アスベスト調査を別会社に委託している場合もあるため、調査機関の信頼性や資格の有無も確認しておくと安心です。
見積もり段階で少し踏み込んで質問するだけで、後の費用トラブルや不安を大幅に減らすことができます。「書かれていないことこそ、聞いておく」が、トラブルを防ぐ鉄則です。
発注者・業者・第三者との役割分担を明確に
アスベスト調査に限らず、解体やリフォームといった工事では、「誰が・何を・どこまで担当するのか」が曖昧なまま話が進んでしまうと、後々トラブルの原因になります。
特にアスベストに関しては、発注者(施主)・施工業者・調査機関など、複数の立場が関与するため、役割の分担を明確にしておくことがとても重要です。
たとえば、建物の所有者である発注者がリフォーム工事を依頼した場合、アスベストの調査や報告を誰が行うのかは、契約前に確認しておくべき大切なポイントです。
業者によっては、「調査は別会社に依頼するので、施主側で手配してください」と言われることもありますし、逆に「当社がすべて対応します」と請け負う場合もあります。
役割分担を明確にするためには、次のような点を事前に確認しておくと安心です。
・アスベスト調査は誰が実施するのか(業者?発注者?調査専門会社?)
・調査結果の報告義務は誰が担うのか(自治体への届け出を含む)
・費用の支払い窓口はどこか(直接支払うのか、業者を通すのか)
・アスベストが見つかった場合の除去や処理の対応と、その費用分担
このように、関係者それぞれの役割と責任の範囲を「あいまいなままにしない」ことが、工事全体のスムーズな進行と信頼関係の構築につながります。
契約書や説明書に書き込んでもらうなど、形に残る方法で確認しておくと、いざというときにも安心です。
国や自治体の補助制度も確認する
アスベストの調査や除去には、数万円〜数十万円の費用がかかることもあり、決して小さな出費ではありません。
しかし、場合によっては国や自治体が用意している補助金や助成制度を活用できることもあります。
特に近年は、老朽化した建物の安全対策や環境保全の一環として、アスベスト対策に対する支援制度を設ける自治体が増えてきています。
制度の内容は地域によって異なりますが、たとえば以下のような支援があることがあります。
・アスベスト含有の有無を確認する分析調査費用の一部補助
・含有が判明した場合の除去工事に対する助成金
・解体にあたり専門業者の利用を条件に費用の一部を負担
ただし、これらの補助制度は予算に限りがあったり、申請期限が決まっていたりすることが多いため、「知らないうちに終わっていた」ということも起こりがちです。
また、事前に申請が必要なケースがほとんどで、工事や調査が始まってからでは対象外になることもあります。
そのため、工事を検討し始めた段階で、「〇〇市(または自治体名) アスベスト 補助金」などで検索してみたり、直接市役所の建築・環境関連の窓口に相談してみるのがおすすめです。
自治体の公式サイトに掲載されている場合もありますが、窓口で最新情報を確認する方が確実です。
少しの手間で数万円、場合によっては十万円単位の補助が受けられることもあります。
調査や除去の費用がネックになっている方こそ、「まず補助金の有無を調べる」というひと手間が、安心で計画的な工事への第一歩となります。
まとめ
アスベスト調査は、法的にも安全面でも欠かせない大切な工程です。
しかし、「誰が費用を負担するのか」が曖昧なまま進むと、後からトラブルにつながることも。所有者や発注者が原則的に負担するケースが多いですが、賃貸や売買の場合は契約内容によって変わるため、見積もりや契約書の段階でしっかり確認し、関係者間で共有しておくことが大切です。
また、国や自治体による補助制度が利用できる場合もあるので、事前に調べておくと負担を軽減できる可能性があります。
安心して工事を進めるためにも、費用と責任の分担をあいまいにせず、納得のいく形で進める準備をしておきましょう。