アスベストは、耐久性や耐熱性に優れた無機繊維で、19世紀から建材や工業製品に広く使用されてきました。しかし、重大な健康被害を引き起こすことが明らかになり、 現在ではアスベストの使用は世界中で規制されており、日本では2006年から全面的に禁止されています。
過去に製造・使用されたアスベストは、今もなお建材や工業製品に含まれているため、アスベスト対策は現在も重要な課題となり注視されている人も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、アスベストの永い歴史や世界の動向を詳しく解説しますので、最後まで読んで知見を深めてください。
アスベストが使われるようになった背景と歴史
ここではアスベストが一般的に使われるようになった歴史を紹介します。
アスベストは紀元前から使われていた
アスベストの歴史は、紀元前2000年頃の古代ローマ時代までさかのぼり、イタリアで発見されたランプの芯にアスベストが使用されていた形跡があります。
また、日本では平安時代に秩父の山中で発見され、幕府に献上された「火浣布」ものちにアスベストであったことが明らかになりました。
19世紀頃になるとアスベストは各地で発見される
19世紀に入ると、カナダやイタリアでクリソタイル(白石綿)が発見され生産量が急増しました。また、南アフリカでは20世紀にアモサイト(茶石綿)が発見され、さらに生産量が拡大しました。
当時は、現在のような建築や工業用ではなく、おもに軍事目的で使用されていたようです。
1887年頃には日本への輸入が始まる
アスベストの日本への輸入は1887年頃に始まり、この頃から西洋文化や技術が取り入れられ、日本でも西洋風の建築物が見られるようになります。
第二次世界大戦中は輸入がいったん途絶えましたが戦後再開され、ピークは1970〜1990年頃で、年間30万トンものアスベストが輸入されました。
しかし、1995年にはクロシドライト(青石綿)とアモサイト(茶石綿)が有害であることが認定され、使用禁止になったため輸入も減少の一途をたどります。
世界各国でも社会問題となる
アスベストの使用は日本やヨーロッパ、米国など多くの国で禁止されていますが、各国の対応はさまざまで依然として使用を続けている国もあります。
このため、アスベストの粉塵が風に乗って他の国に拡散したり、アスベスト製品を輸出した国で被害が発生したりするなど、アスベスト問題は世界的な社会問題となっています。
アスベスト規制における日本国内の法改正の流れ
⚫︎1971年「特定化学物質等障害予防規則」の制定
工場では局所排気装置の設置、半年に一回は空気中の濃度を測定など
⚫︎1972年「労働安全衛生法」の制定
局所排気装置の設置と作業環境測定など定期的な自主検査を義務づけ
⚫︎1975年「特定化学物質等障害予防規則」の制定
アスベスト含有率が5%を超える場合の吹付け作業を原則禁止
⚫︎1995年「安全衛生施行令、安全衛生施行規則、特定化学物質等障害予防規則」の改正
クロシドライト(青石綿)とアモサイト(茶石綿)の使用禁止
アスベスト含有率が1%を超える場合の吹付け作業を原則禁止
⚫︎2004年「安全衛生施行令」の改正
アスベストを含む10品目の製造禁止
⚫︎2006年「安全衛生施行令」の改正
アスベストの製造や輸入、使用禁止により日本でのアスベスト使用は全面的に禁止となる
アスベスト規制における日本と世界の違い
世界のアスベスト規制は国によって差があり、使用や製造が禁止されている国もあれば、未だそれらを許可している国もあるのです。
アスベストの使用や製造が禁止されている国は、ヨーロッパ諸国やオーストラリア、アイスランド、オランダなどです。これらの国では、アスベスト含有建材の解体・改修工事にも厳しい規制が適用されています。
しかし、中国、ロシアなどではアスベストの使用や製造が許可されており、これらの国ではアスベストの使用や製造に関する規制が不十分な場合もあります。そのため地域によっては、アスベストによる健康被害が深刻化しています。
世界のアスベスト規制は、国際労働機関(ILO)の「アスベスト使用禁止条約」によって推進されています。日本はこの条約に加盟しており、世界のアスベスト規制の強化が進むことが期待されます。
まとめ
アスベストは、耐熱性や耐久性に優れた素材として、第二次世界大戦以降、建築材や工業製品などに広く使用されてきました。しかし、長期間アスベストにさらされることで、健康被害を引き起こす危険性があることが分かってきました。
アスベストの危険性が認識されるにつれて、世界各国でもアスベストの使用規制が強化され、欧州では1980年代からアスベストの使用が原則禁止される国が増え、現在ではEUの25カ国すべてで原則禁止となっています。
日本では、2006年にアスベストの使用を全面禁止する法律が施行されましたが、アスベストは一度使用すると簡単には除去できないため、現在でも多くの建物や製品にアスベストが残っているのが現状です。
アスベストの危険性を理解し、アスベストの使用の防止や解体時の取扱いには十分な配慮をし、アスベストによる健康被害の軽減に努めましょう。
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