アスベスト基礎知識

アスベスト産業廃棄物の危険性と法令遵守の重要性!!

かつて「魔法の鉱物」と呼ばれたアスベストは、今では多くの人の命を脅かす危険な素材として恐れられるようになりました。

アスベスト産業廃棄物は、適切に処理されなければ飛散して肺に侵入し、深刻な健康被害を引き起こす可能性があるため、どのような対応が必要なのか詳しく知りたいと思っている人も多いのではないでしょうか。

本記事では、アスベスト産業廃棄物の危険性と法令遵守の重要性を徹底解説しています。 最後まで読んで、正しい知識を身につけ行動していきましょう。

アスベスト産業廃棄物とは?

アスベストを含む産業廃棄物は、適切に処理されなければ、飛散したアスベスト繊維が人の健康被害を引き起こす可能性があります。

アスベストの種類と用途

アスベストの代表的な種類として3種類があげられます。それぞれ耐熱性や強度などが異なり用途も様々です。


⚫︎クリソタイル(白石綿): 最も一般的に使用された種類。建材(スレート、ボード、吹き付け材など)、自動車部品、摩擦材など
⚫︎クロシドライト(青石綿): 耐熱性が高く、主に断熱材や耐火被覆材などに使用
⚫︎アモサイト(茶石綿): 強度が高く、主に建築材料や摩擦材などに使用

アスベスト産業廃棄物の種類と発生源

《アスベスト産業廃棄物の種類》
アスベスト産業廃棄物は、大きく以下の2種類に分類されます。

⚫︎アスベスト含有建材: 過去に建築材料として広く使用されていたアスベストを含む建材。主に、スレート、ボード、吹き付け材など
⚫︎アスベスト含有製品: アスベストを含む工業製品。主に、自動車部品、摩擦材、断熱材、耐火被覆材など

《アスベスト産業廃棄物の発生源》
アスベスト産業廃棄物は、以下の様々な場面で発生します。

⚫︎建設工事: アスベスト含有建材の解体や改修
⚫︎製造業: アスベスト含有製品の製造過程
⚫︎その他: アスベスト含有製品の廃棄、アスベスト含有設備の解体

法令で定められた区分と処理基準

《法令で定められた区分》
アスベスト産業廃棄物は、飛散性と石綿含有量に基づいて、以下の2種類に区分されます。

⚫︎飛散性アスベスト(廃石綿等): 飛散しやすい状態のアスベスト。特に危険性が高く、厳格な管理が求められます。
⚫︎非飛散性アスベスト(石綿含有産業廃棄物): 石綿を0.1%以上含む産業廃棄物。飛散しにくい状態のアスベスト。飛散性アスベストよりは危険性が低いですが、適切な処理が必要です。

《処理基準》
アスベスト産業廃棄物の処理基準は、区分によって異なります。

飛散性アスベスト(廃石綿等)
⚫︎固化処理または薬剤による安定化処理を行い、耐水性の容器に二重に密封して埋立処分する必要があります。
⚫︎処理施設は、飛散防止対策が徹底された専用施設でなければなりません。

非飛散性アスベスト(石綿含有産業廃棄物)
⚫︎飛散防止対策を講じた上で、埋め立て処分または溶融処理を行うことができます。
⚫︎埋め立て処分を行う場合は、飛散防止対策を施した専用区画に埋め立てる必要があります。
⚫︎処理業者を選定する際には、許可を受けている業者であることを確認する必要があります。

アスベスト産業廃棄物の適切な保管方法

アスベスト廃棄物の保管は、以下のように「廃棄物処理法」や「石綿障害予防規則」などの法令で厳しく規制されています。

保管場所の選定基準と設備

《保管場所の選定基準》
アスベスト産業廃棄物の保管場所は、以下の基準を満たす必要があります。

⚫︎飛散防止対策: 飛散防止のために、囲いや屋根を設置する必要があります。
⚫︎雨水対策: 雨水による浸食を防ぐために、適切な排水設備が必要です。
⚫︎セキュリティ: 許可のない人の侵入を防ぐために、鍵付きの門扉や監視カメラを設置する必要があります。
⚫︎標識: アスベスト産業廃棄物であることを示す標識を掲示する必要があります。

《設 備》
保管場所には、以下の設備が必要です。

⚫︎貯蔵容器: アスベスト産業廃棄物を安全に保管できる容器が必要な場合があります。
⚫︎飛散防止装置: 飛散防止のために、集塵装置や換気装置を設置する場合があります。
⚫︎安全設備: 万が一の事故に備えて、消火器や救急箱などを設置する場合があります。

容器の種類と使用方法

アスベスト産業廃棄物を安全に処理するためには、適切な容器を使用することが重要です。

《容器の種類》

⚫︎飛散防止対策が施された専用容器
一般的な種類としては、石綿専用袋、ドラム缶、コンテナなどがあり、容器にはアスベスト含有物の表示を必ず行う必要があります。

⚫︎その他の容器
レベル3のアスベスト廃棄物で、飛散性が低い場合は、上記の限りではないので、自治体の条例や処理業者の指示に従いましょう

《使用方法》
⚫︎容器は破損や漏れがないことを確認してから使用する
⚫︎アスベスト廃棄物は詰め込みすぎない
⚫︎容器の口をしっかりと閉じる
⚫︎容器にアスベスト含有物の表示を行う
⚫︎容器は適切な場所に保管する

アスベスト産業廃棄物の保管は、法令を遵守し、適切な保管を行うことが重要です。

飛散防止対策と管理方法

《飛散防止対策》
アスベスト産業廃棄物の飛散防止対策は、労働者の健康被害を防ぎ、環境汚染を抑制するために重要です。

⚫︎作業エリアの囲い込み: 飛散防止シートやネットで作業エリアを囲い、飛散範囲を限定する
⚫︎湿潤化: 水で湿らせてアスベスト繊維の飛散を抑える
⚫︎負圧: 作業エリアを負圧状態にすることで、外部への飛散を防ぐ
⚫︎個人防護具: マスク、ゴーグル、手袋などを着用し、飛散した繊維の吸入や皮膚への接触を防ぐ

《管理方法》
飛散防止対策に加え、以下の管理方法も重要です。

⚫︎作業手順の明確化: 作業手順書を作成し、安全な作業手順を徹底する
⚫︎作業員の教育: 作業員にアスベストの危険性と飛散防止対策に関する教育を行う
⚫︎作業記録: 作業内容、飛散防止対策、健康状態などを記録する
⚫︎定期的な点検: 飛散防止設備や個人防護具の定期的な点検を行う

アスベスト廃棄物の処理は法令を遵守し、適切な飛散防止対策と管理を行うことが重要です。

アスベスト産業廃棄物の適切な処理方法

アスベスト産業廃棄物は、飛散防止対策を徹底した上で法令に基づき処理する必要があります。

処理業者選びのポイント

アスベスト産業廃棄物の処理は、専門知識と技術を持つ業者に依頼することが重要です。

⚫︎許可の確認: 必ず「廃棄物処理法」に基づく許可を持つ業者を選ぶ
⚫︎実績: アスベスト処理の実績が豊富で、安全対策に力を入れている業者を選ぶ
⚫︎費用: 費用だけでなく、サービス内容やアフターフォローもしっかり確認する
⚫︎対応: 担当者が丁寧に対応し、疑問点にしっかりと答えられる業者を選ぶ
⚫︎現地調査: 必ず現地調査を行い、適切な処理方法を提案してくれる業者を選ぶ

レベル別の処理方法と費用相場

アスベスト産業廃棄物は、飛散性に応じて3つのレベルに分類され、それぞれ適切な処理方法と費用相場が異なります。

1. レベル1:飛散性が高い
⚫︎処理方法: 飛散防止対策を徹底した上で、専用施設で焼却または固化処理を行う。
⚫︎費用相場: 1㎥あたり3万円~8万5,000円

2. レベル2:飛散性がある
⚫︎処理方法: 飛散防止対策を講じた上で、専用施設で破砕・固化処理を行う。
⚫︎費用相場: 1㎥あたり3万円~8万5,000円

3. レベル3:飛散性が低い
⚫︎処理方法: 飛散防止対策を講じた上で、一般廃棄物として処理できる場合がある。
⚫︎費用相場: 1㎥あたり3万円~5万円程度

費用は、処理方法、処理量、業者によって異なります。

処理手順と安全対策

《処理手順》
アスベスト産業廃棄物の処理手順は、大きく以下の4ステップに分けられます。

1. 調査・分析: 廃棄物の種類、量、アスベスト含有量を調査・分析します
2. 処理方法の決定: 調査結果に基づき、飛散防止対策を徹底した適切な処理方法を選択します
3. 処理業者選定: 許可を受けた信頼できる処理業者を選びます
4. 処理の実施: 処理業者と連携し、法令遵守と安全対策を徹底した上で処理を行います

《安全対策》
アスベスト処理作業では、以下の安全対策が必須です。

⚫︎飛散防止対策: マスク、ゴーグル、手袋などの着用、作業エリアの囲い込み、湿潤化などを行います
⚫︎健康管理: 作業員への教育、定期的な健康診断、作業記録の作成などを行います
⚫︎法令遵守: 廃棄物処理法、石綿障害予防規則など、関連法令を遵守します

処理後の確認と書類管理

《処理後の確認》
処理後の確認は、以下の項目を徹底的にチェックすることで、処理の完了と安全性を確認します。

⚫︎処理方法の確認: 処理方法が法令に基づき、適切に実施されたことを確認します
⚫︎処理後の状態: 処理後の廃棄物が適切な状態であることを確認します
⚫︎処理業者への確認: 処理業者が許可業者であること、処理記録が適切に作成されていることを確認します
⚫︎分析結果: 処理後の分析結果が基準値を満たしていることを確認します
⚫︎書類の確認: 処理に関する書類が全て揃っていることを確認します

《書類管理》
処理に関する書類は、法令で定められた3年間の保管が必要です。書類管理は、法令遵守と万が一のトラブル発生時の証拠として重要です。

法令遵守の重要性

アスベスト産業廃棄物の処理には、厳格な法令遵守が求められます。しかし、法令に違反すると、厳しい罰則が科される可能性があります。

罰則について

違反者には行政命令を行わず、3ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。

《違反事例》
以下の行為は、法令違反となる可能性があります。

⚫︎許可を受けずに処理を行う
⚫︎処理基準に違反して処理を行う
⚫︎飛散防止対策を怠る
⚫︎書類の作成・保管を怠る

法令遵守によるメリット

アスベスト産業廃棄物の処理における法令遵守は、単なる義務ではなく、企業にとって多くのメリットをもたらします。

1. 労働災害リスクの低減
法令遵守は、飛散防止対策や健康管理を徹底することにつながり、労働者がアスベストによる健康被害を受けるリスクを大幅に低減します。

2. 企業イメージの向上
法令遵守は、企業の社会的責任を果たしているというイメージを向上させ、顧客や取引先からの信頼を得ることにつながります。

3. コスト削減
法令違反による罰金や損害賠償といったリスクを回避することで、コスト削減につながります。

4. 円滑な事業運営
法令遵守は、行政処分を受けるリスクを減らし、事業を円滑に進めることができます。

5. 持続可能な社会への貢献
アスベストによる環境汚染を防ぎ、持続可能な社会の実現に貢献することができます。

自治体への相談方法

アスベスト産業廃棄物の処理は、法令遵守が必須です。しかし、法令内容や処理方法など、専門的な知識が必要な場合は、お住まいの自治体に相談することをおすすめします。

《相談窓口》
多くの自治体は、環境部廃棄物担当課などにアスベストに関する相談窓口を設けています。

《相談方法》
⚫︎電話: 各自治体のホームページに電話番号が記載されています。
⚫︎メール: 各自治体のホームページにメールアドレスが記載されています。
⚫︎窓口訪問: 直接窓口に訪問して相談できます。

《関連情報》
各自治体のホームページや環境省のホームページにもアスベストに関する情報が掲載されています。

まとめ

アスベスト産業廃棄物は、私たちの生活に潜む見えない敵です。しかし、法令遵守と知識を身につければ、安全な未来を守ることができます。法令遵守は、あなたと周りの人の安全を守るだけでなく、企業としての責任でもあり、未来への投資です。

適切な処理で安心するためにも、必ず許可を受けた業者に依頼し、飛散防止対策を徹底し、知識と行動で、危険性を封じ込め、一緒に安全な未来を守りましょう。