保温断熱性に優れているため、住宅の建材として使用されていたアスベスト(石綿)。しかし、体に吸入すると石綿特有の疾病の原因になる危険な物質です。住宅の外壁にアスベストが使われてないかどうか不安に思っている人もいるのではないでしょうか。
この記事ではアスベストとは一体何なのか、アスベストを見分ける方法などをわかりやすく解説します。この記事を読んで、アスベストについて理解を深めてください。
アスベストとは?
アスベストとは、保温性・断熱性・防音性に優れている繊維状の天然鉱物です。そのため建築物や船舶、自動車などの製造によく使用されてきました。しかしアスベストの健康被害が明らかになり、現在では、原則として製造・使用は禁止されています。
また、アスベストが使用されているかどうかの調査が義務付けられ除去作業も規制が厳しくなっています。
アスベストの特徴
アスベストの見た目は、白色・茶色・灰色など多様です。形状は、非常に細い繊維状で直径は数マイクロメートル程度で肉眼では見ることができません。アスベストは、耐熱性・耐久性・断熱性・防音性・耐腐食性に優れています。
また、アスベストは細くしなやかで人工繊維よりも強度が高く性能が安定しているので、多くの工業製品に使用されてきました。アスベスト自体が問題ではなく、飛び散った繊維を吸い込むことが危険とされています。
アスベストが身体に及ぼす影響とは?
アスベストは長い時間をかけて摂取すると、呼吸器官に重大な健康被害を及ぼすことがわかっています。アスベスト繊維は体内に侵入すると肺に蓄積されて、石綿特有の疾病の原因に。その中でも、発症する可能性の高い病気が3つあります。
・石綿(アスベスト)肺
肺が綿維化してしまう「肺綿維症(じん肺)」という病気の一種である
・肺がん
肺細胞に入り込んだアスべスト繊維の物理的刺激が肺がんを発症させる
・悪性中皮腫
滞在期間20年〜30年で発症する悪性の腫瘍である
これらの健康被害は、アスベストを吸入してから長い期間が経ってから発症するケースが多いです。悪性中皮腫の場合、発症までに約35年という長い潜伏期間があります。アスベストを仕事で扱っていた人、または現在扱っている人は定期的に健康診断を受けましょう。
アスベストに似ている素材
アスベストと見た目が似ている素材「ロックウール」と「グラスウール」は国際がん研究会で発がん性が認められていません。その理由は、ロックウールとグラスウールはアスベストに比べて繊維が太いため肺まで到達しにくいからです。
ロックウールとグラスウールの見た目や特徴を理解して、アスベストと間違えないように違いを知っておきましょう。
ロックウール
ロックウールは、石英質(せきえいしつ)の岩石を原料に作られます。アスベストは直径の細い繊維が束になっているのに対し、ロックウールは棒状で繊維の直径が太く束になっていません。特徴として、優れた耐火性・断熱性・防音性を持っています。
主に、断熱材や防音材として使用されることが多いです。リサイクル可能で環境に優しい素材です。
グラスウール
グラスウールは、微細なガラス繊維が空気を含んでいるため断熱性能が高く建物の冷暖房効果を上げることができます。高温に耐える性能があり、火災時に建物を守る役割を果たすことができます。
グラスウールは、リサイクルが可能で製造過程で排出されるガスの量が少なく環境に優しい素材といえるでしょう。
アスベストを見分ける方法
ここでは、アスベストを見分ける方法について解説します。アスベストかどうかを手で確認したり、こすったりする行為は大変危険なので絶対にしないようにしてください。アスベストかどうかを見分ける際は、専門家へ依頼するなど十分に注意をして行うようにしましょう。
綿の状態を確認する
吹きつけアスベストは、表面に露出しているため見た目で判断しやすいです。吹き付けアスベストとは、アスベストにセメントや水を混ぜて吹き付け機を使って吹き付けたもの。吹きつけアスベストの特徴は下記のようなものがあります。
・表面が綿状で柔らかい
・簡単に針を刺すことができ、深さは数cmである
・青色、灰色、白色または茶色である
吹き付けアスベストは、経年劣化により綿が垂れ下がっていることが多くあります。また、1986年(昭和61年)以前に建てられた建物に綿状のものが吹き付けられていた場合、アスベストと疑ったほうが良いでしょう。
お酢をかけて確認する
アスベストは、酢に強い性質を持っています。そのため、アスベストに酢をかけても溶けることなく形状を維持します。酢をかけて溶ける場合はロックウールである可能性が高いでしょう。
手で確認する
アスベストは、指でこすっても繊維状のまま形が崩れないのが特徴です。指でこすって粉々になった場合は、ロックウールの可能性が高いでしょう。
建築物の年代で確認する
住宅に使用されている建材にアスベストが使用されているかどうかは、施工の際のアスベスト含有率を定める法改正の時期によってわかります。
・1975年(昭和50年)/アスベストの含有率が5%を超える施工が禁止
・1995年(平成7年)/アスベストの含有率が1%を超える施工が禁止
・2006年(平成18年)/アスベストの重量が0.1%を超える製品の製造、輸入、譲渡、提供または使用が禁止
上記の法改正により、1975年(昭和50年)以前は建物にアスベストが使用されている可能性が高く、2006年(平成18年)以降はアスベストが含まれる建物が少ないことがわかります。
また、吹きつけは昭和で終わり、2006年(平成18年)まではスレートなどの建材に使用されていた塗装剤や下地にアスベストが含まれていることがわかっています。
住宅の仕様書で確認する(建物が完了した時の図面や完成図書など)
住宅にアスベストが使用されているかどうかを知るために、建物の仕様書を確認することが有効です。仕様書には、建物の設計や建築に使用された材料などが記載されています。一般的にアスベストが使用される建材に、屋根・壁・断熱材・床・配管などがあります。
古い建物では、仕様書に明記されていなくてもアスベストが使用されていることがあるので注意が必要です。建物が古い場合は、専門家または業者へ相談しましょう。
業者に依頼する
住宅にアスベストが含まれているかどうかを自己判断することは、難しく危険も伴います。そのため、専門業者に依頼することをお勧めします。アスベストが含有されているか調査をするためには下記の資格が必要です。
・建築物石綿含有建材調査者
法改正により、アスベストを調査する際に必須の資格になりました。
住宅にアスベストが含有されているか気になる人は、まず事前調査を依頼してみましょう。アスベストが含有されていた場合は、アスベストのレベルによって除去方法を決定し着工します。除去方法については、3つの方法があります。
アスベストの除去方法
ここでは、アスベストの除去方法について解説します。
除去工法
除去工法は、アスベストが含まれる建材を完全に除去する工法です。完全に除去することによって、再度アスベストが放出されるのを防ぐことができます。除去工法の際には、作業員や周辺環境に影響を与える可能性があるため安全管理や作業環境の確保が必要です。
封じ込め工法
封じ込め工法は、アスベストを含む建材を取り除かずにその場でアスベストを封じ込める工法です。封じ込め工法には、塗装・被覆・固化・密封などの方法があります。この方法は、アスベストを漏出することを防ぐことができるので安全性が高いとされています。
ただし、封じ込めた建材が破損した場合や建物の耐久性やメンテナンスに問題が生じた場合は、再度アスベストが放出される可能性があるため定期的な点検が必要でしょう。
囲い込み工法
囲い込み工法は、アスベストを含む部分を専用のシートやパネルで囲い込み、建物内にアスベストが漏出しないようにする方法です。この方法は、建物内での作業が必要な場合やアスベストの除去が困難な場合に使用されます。
封じ込め工法と同様、建材を除去せずにアスベストの放出を防ぐことのできる工法です。
まとめ
今回は、アスベストを見分ける方法について解説しました。アスベストは、石綿特有の疾病を発症させる原因となる大変危険な物質です。住宅にアスベストが使用されているか、不明な場合は専門業者に依頼して事前調査をしてもらいましょう。
建材にアスベストが含有されていた場合、アスベストレベルに応じて、除去工法・封じ込め工法・囲い込み工法の中から対策を実施します。建材にアスベストの含有が疑われる場合は、専門知識と高い技術を持っている信用できる業者に依頼し、適切な除去を行いましょう
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