アスベストにまつわる法律は、我々の健康と環境に深刻な影響を与える可能性があるため年々強化されています。アスベストに関する法律の規制内容は、アスベストの使用制限や健康への影響への対処、労働者の保護、廃棄物の処理方法などです。
この記事では、日本で定められているアスベストに関する法律や罰則について解説します。アスベスト含有建築物の解体工事に関わる人々は、この記事を読んでアスベストに関する法律について理解を深めてください。
アスベストが法規制される理由
アスベストが法規制されている理由は、主に下記の3が挙げられます。
- 健康被害
- 環境問題
- 建物の老朽化による解体・改修工事の増加
ここでは、それぞれを詳しく解説します。
健康被害
アスベストの粉じんを体内に吸入すると、アスベスト特有の疾病にかかる恐れがある危険な物質です。アスベストは、人の髪の直径よりも非常に細く肉眼では見ることができません。アスベストの非常に細い繊維は、空気中に飛散し浮遊しやすく人の体内に入ると肺胞に沈着しやすいという特徴があります。
吸入したアスベストの繊維の一部は異物として体外へ排出されますが、残った繊維は肺の組織内に長く留まりアスベスト特有の疾病の要因となります。アスベストを吸入したことによって引き起こされる可能性がある疾患は主に下記になります。
- 悪性中皮腫
- 石綿肺
- 肺がん
参考: 厚生労働省
アスベストによる健康被害は、長い潜伏期間を経て発症するという特徴があり中皮腫の場合、平均35年前後という長い潜伏期間ののちに発病するケースが多数。アスベストによる被害は、石渡鉱山・石綿製品製造工場・断熱作業など直接石綿を取り扱ったためにばく露した「職業ばく露」と石綿を取り扱う現場で作業をことによってばく露する「間接的な職業ばく露」が最も多いとされています。
アスベストの吸入による健康被害が明らかになり、アスベストは法律で厳しく規制されています。
環境問題
アスベストが大気に飛散すると、環境汚染を引き起こす可能性があります。改修・解体時にアスベストの有無を調べずに作業を行ってしまうと、アスベストの繊維が空気中に飛散。空気中に飛散したアスベストは、作業者や周辺住民の健康を脅かし、さらに環境に負荷を与える要因の1つとなります。
建物の老朽化による解体・改修工事の増加
アスベストは1960年代〜1990年代頃に多く輸入され、そのほとんどが建材として使用されました。アスベストが建材として多く使用されていた建築物の多くが老朽化し、すでに多くの建物が解体・改修工事が行われています。
しかし、老朽化した建物の解体・回収工事は2028年頃のピークに向け今後も増えていき2050年代〜2060年代まで続くと予想されています。 解体・改修工事の際に、アスベストが空気中に飛散する恐れがあるため法律で規制されています。
アスベストに関する法規制
アスベストに関する法規制は、過去に繰り返し行われてきました。ここでは、過去の法規制の歴史とアスベストに関連する法律について解説します。
アスベストの法改正の歴史
アスベストに関する法規制について、年代順に解説します。
- 1975年 特定化学物質等障害予防規則の改正 石綿が5%を超える建材の吹きつけ作業を禁止
- 1986年 ILO第72回総会でアスベスト条約が採択 アスベストによる健康被害から作業者の安全を確保するために発行された条約。特に危険である「クロシドライト(青石綿)」やクロシドライトが含有した製品の使用を禁止
- 1989年 大気汚染防止法 石綿を特定粉じんとし、特定粉じんが発生する施設の届出、石綿製品の製造、加工工場の敷地境界基準を規定
- 1995年 労働安全衛生法施行令の改正・廃棄物処理法 「アモサイト(茶石綿)」「クロシドライト(青石綿)」の製造、輸入等の禁止。
- 2006年 労働安全衛生法施行例改正・廃棄物処理法 石綿0.1%を超える製品の製造、使用、輸入が全面的に禁止。解体・改修工事の際に出る廃棄物の適正処分について強化。
- 2023年 有資格者によるアスベストの事前調査・分析が義務化 アスベストの事前調査を行うことが可能な資格が一部変更になりました。アスベストの事前調査を行うことができるのは次の4つの有資格者のみです。
▪️特定建築物石綿含有建材調査者(特定調査者)
▪️一般建築物石綿含有建材調査者(一般調査者)
▪️一戸建て等石綿含有建材調査者(一戸建て等調査者)
▪️令和5年9月30日以前に日本アスベスト調査診断協会に登録している者
解体・改修工事のほか、建築物の模様替え、建築設備の取り付け、取り外し、修理などの工事も含まれます。
参考:国土交通省
アスベストに関する法律
アスベストに関するその他の法律は下記のとおりです。
- 建築基準法
2006年10月1日以降に着工する建築物に、アスベストの飛散の恐れがある建材の使用禁止。増改築時には、アスベスト等規制材料の除去を義務付け。 - 廃棄物の処理及び清掃に関する法律
廃棄するアスベストは、専門の資格を持つ業者に処分を依頼しなければならない。 - 建設リサイクル法
解体工事の際に、事前に適切な届出や申請を行うこと。アスベストが含有している廃棄物の分別また他の建築廃棄物のリサイクルを妨げないこと。
参考:国土交通省
罰則について
アスベストに関する法律に違反した場合、罰則が科される場合があります。大気汚染防止法のアスベスト除去の方法について違反が認められた場合、3ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。
また、事前調査の報告をしなかったり報告に虚偽が認められた場合には30万円以下の罰金となります。 石綿障害予防規則に関する罰則は、違反の場合は6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。
まとめ
アスベストは、体内に吸入すると人々の健康に被害を与え環境汚染の原因にもなる可能性がある危険な物質です。その危険性から、アスベストを規制する法律は過去に何度も改正されてきました。
2006年には、アスベスト含有率が0.1%を超える製品の製造・使用・輸入が全面的に禁止されました。 また、2023年10月からはアスベストの事前調査は有資格者のみ行うことができるようになりました。
アスベストの改修・解体等に関わる場合は、アスベストに関する法律について知っておくことは大変重要です。
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